したくないとは言ってない2人は小さな金属の箱の中にいた。
ゴウ、ゴウンと鳴る危うげな音と、その度に揺れる体が箱の不安定さを物語っている。
「馬鹿げてる」
呟いたのはクロウリーだ。彼は脚を大きく広げ、固い座面に腰掛けていた。
「そんなことはない」
対照的にアジラフェルはお行儀よく脚を揃えており、その背筋は天にまで届きそうなほど伸びている。
痩せ型だが背が高い男と、中背だが中肉ではない男2人が乗った箱はそれなりに重たいはずで、しかし他の箱と変わらないスピードで、相変わらずゴウゴウギシギシと言わせながら、2人をゆっくりと上へ上へと運んでいく。
「じゃあ逆にこの状況で馬鹿げてないと言えるものがあるのか?」
クロウリーの言葉にアジラフェルは胸を張って答えた。
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