繋いだ心は離さないわ「旅行に行きたいわ」
彼女の思いつきはいつだって思いつきだが、今日の彼女はさらにぶっ飛んでいた。
大学の課題もそつなくこなし、ファッション誌を読んでいたはずのメルトが突然、雑誌を閉じてそう言った。
「旅行? どこ行く?」
実を言うと、彼女がこの部屋に来てから一度として遠出をしたことはなかった。
「そうするとどこに行く? 紅葉が見頃なのは北海道とか東北とかだけだし……」
「紅葉もいいとは思うけど、そうね……」
お茶の時間だったので、オレがキッチンからいつもセットを持ってきてソファに座ると、彼女もいつもの席に座った。
──具体的には、オレの膝の上に。
あれから、彼女は積極的に自分の膝の上にのり、あれこれと要求するようになった。
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