蘭はる本格的な秋風が吹き抜けるようになったこの頃
もうそろそろ秋服の出番かな...そう思って衣替えを行う時期
東京都港区六本木にある超高層マンションの最上階に住んでいる蘭は今宵も愛する恋人である春千夜と愛を確認し合い、少し太陽が顔を出している時間帯にやっと眠りにつこうとしている。
「はるちゃん、腰大丈夫?」
「痛い...」
「うわ、声もガラガラじゃん」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「ごめんって。はるちゃんが余りにも可愛すぎたからつい」
「.........ねるぞ」
「あ、照れてる♡かーわい」
快楽の余韻に浸りながら甘ったるいピロートークを軽く繰り広げ、春千夜は蘭に背中を向けて布団の中に潜り込んでしまった。
ベッドライトに照らされ、一糸まとわぬ姿で眠る春千夜の姿はまるでヴィーナスのように美しかった。
そんな春千夜の頭に軽くキスを落とし、蘭も眠りについた。
翌朝
天井から床まで続いている大きな掃き出し窓から入ってくる朝日に照らされ、蘭は目を覚ます。
「...さむ。」
いくら昨晩恋人と燃え盛ったとはいえ、朝は冷え込み、服を着ていなかった蘭にとっては寒いと感じる朝だった。
「服どこだったっけな」
流石に布団に包まるだけでは寒さを凌ぐことができず、長袖のロンTに着替えるために一度寝室から出ていく蘭。
そして、着替えた蘭が寝室に戻ってくるとそこには蘭が寝ていた場所で暖をとる愛しい恋人の姿があった。
「え、ちょ。可愛すぎるだろ...」
蘭がベッドシーツに残した温もりを頼りに蘭の姿を探しているのか、少しモゾモゾしている春千夜の姿は、蘭にとってはたまらなく愛おしいものだった。まるで、母親を見失った子猫のようである。
蘭は春千夜を起こさないように静かに布団の中に戻り、春千夜に薄手の毛布を掛けてあげて二度寝を決め込もうとした。
「んん......らん.........?」
「はるちゃん?ごめん、起こしちゃった?」
「......どこにも行かない......で......」
スースーと可愛らしい寝息をたてて眠る春千夜は一体どんな夢を見ているのだろうか。きっと夢の中でも愛する恋人を探していたのかもしれない。そんな恋人の愛おしい姿を目の当たりにした蘭は、先程来たばかりのロンTのせいもあってか、徐々に体の体温が上がっていた。
「......うぅ、さみぃ.........」
春千夜はあまりの寒さに、蘭の胸の中に顔をうずめるようにくっつく。
「え、ちょ、はるちよさん??」
春千夜は急なデレ行動に戸惑っている蘭の気も知らないで、未だに夢の中を探索中である。
一方蘭はというと、普段あまり甘えてこない恋人が急に甘えてきたことによって心拍数が尋常ではないほどに上がり、自分の鼓動の音が聞こえてしまわないか気が気でなかった。
蘭のTシャツをぎゅっと握って眠る春千夜は、母猫を見つけて安心しきった子猫のようだった。
蘭は自分しか見ることができない春千夜の甘えん坊な姿に優越感を抱きながら、紅い花が咲き乱れた小さな恋人の背中を優しく包み込むように抱きしめて眠った。
時計の針が頂点で揃うころ、春千夜はあまりの暑苦しさに目を覚ました。
夢の世界から意識を取り戻した途端に目の前に広がる愛しい恋人の匂いを感じ、少しほんわかした気持ちになったがすぐに現実に戻った。
「おい、蘭。起きろ。あと、暑いから離せ」
「...んん?あぁ、はるちゃんおはよぉ」
「おはよ。早くその手退けろ。暑苦しい」
「え?はるちゃんが自分からくっついて来たくせにぃ」
「...は?」
「覚えてないの?朝方に、寒い。って言って俺にくっついてきたのははるちゃんだよ?」
「......まじか...」
「寒さに震えて俺の温もりを探すはるちゃんまるで猫ちゃんみたいで可愛かったな〜♡ねぇ、これからも全裸で寝てよ♡」
「ぜってぇに嫌だ!!!却下だ!!」
「えぇ〜ケチぃ〜恋人の願い聞いてくれたっていいじゃん〜」
寝起きから騒がしいカップルだが、これも2人が愛し合っている証である。
その後も、くっついてもらう為に薄着で寝させる蘭がいたりいなかったり...
そして、寝ている時に無意識に蘭にくっついて暖を取る春千夜がいたりいなかったり...