王子様とお姫様。そして魔法使い。「丹恒、何を隠れている?」
丹楓の影に隠れて恥ずかしがっている小さな子供の姿を、今でもよく覚えている。
幼馴染で良い友人関係を築いていた丹楓は、大人になって自身の家族が出来ても良く付き合ってくれた。引き取ったばかりの長男に会わせてもくれた。小さい手が強く自分の指を掴んでくれた瞬間は、何にも代えがたい感動があったものだ。
その赤ん坊は、丹恒は、大きくなっても自分に懐いてくれた。初めての言葉が自分の名前だったので、その時ばかりは丹楓に悔しがられた。
そんな子が、今日ばかりは中々顔を見せてくれない。「ぜったいきて!」とねだられ、教師として勤めていた高校を休んで駆けつけた、幼稚園のお遊戯会。運転手として引っ張ってきた応星と三人ならんで丹恒の王子様の姿をカメラにありったけおさめて、帰りのお迎えも同行させてもらった時だった。
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