譲テツ♀ 好きです、と告白すれば自分よりも二回り以上も年嵩の養い親は露骨に眉をしかめた。
「はっ、何を言うかと思えば母親の胸でも恋しくなったか?」
譲介の生い立ちを揶揄しているとも取れるその言葉に、かつての自分であればすぐに頭に血が上って両手で机を叩きつけてその場から立ち去っていたに違いなかった。養い子の告白を一笑に付したその女を目の前にしてもほんの僅かも苛立ちに心が波立つことはない。その振舞いの意図を正しく読み取れるほどには成長したのだ。
「母親? 笑わせるなよ。あんたほど世間的な母親のイメージから程遠い人もいないでしょう。それに、僕の母とあんたは似ても似つかない、重ねようがないんだ」
かつて自分を捨てたと長年誤解したまま恨んでいた母を、互いに実の親子と名乗らせぬまま引き合わせたのはあなたでしょう、と食い下がれば忌々し気に舌打ちする。
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