聖海+奈良くん ワンドロ 芹をつむ娘に惚れてしまった、ととある皇子から聞いたのが事の始まり。彼が愛を持って皆に接していることは確かだったが、一目惚れするような性分には見えなかったので少々意外だった。
思えば、芹の娘はかなり変わった妃だったと思う。他の妃たちは、皆が皇女や有力豪族である蘇我氏の娘という身分であったが、その娘は宮の食事や饗宴を管轄する膳部氏の出であった。それゆえに芹をつんでいたのだが、そんな娘の姿を見守っていたくらいには皇子も変わっていた。
身の回りの世話をする下々の者のことも、宮に立ち入ることさえ出来ない野山の民の生活でさえも、己の目で見て、耳で聞いて、己の道を判断する皇子であった。それゆえ民からの支持も厚く、まさに神仏の化身のようだと囁かれている。
4090