①リボシス:第三者視点
マリーにはお気に入りがある。華美な装飾と柔らかなクッションで作られた王座。眠る前に鼻を掠めるバラの香り。ティーパーティーにいつもある小さなスコーンたち。それらを割って塗られるクロテッドクリーム。ガーデンを開園した記念に貰ったティーカップ。それから、彼女のティーガーデンを守る愛らしい騎士たち。
「イライ」
スコーンにクリーム、美しい花垣に絢爛なテーブル、それからリボンで彩られた騎士たちで、彼女のティーガーデンは織り成されている。舌に乗せた名前は、その中でもとびっきりのお気に入りだった。口にする度に優しい味がする名前だ。教会のシスターのように穏やかに微笑んでいるのに、それでいてお菓子のように愉快な言葉を紡いでくれる子。騎士たちの中でもひとりだけ女王の友人という立場を得ているその青年は、今日も今日とてマリーに優しく微笑んでくれる。
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