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    トーナ

    @52tona1tona
    成人済
    短文置き場。ジャンルごった煮です。

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    トーナ

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    一度は書いてみたかった門梶♀

    ##門梶

    信号が赤から青に切り替わったのを機に、止めていたハンドルを動かす。時刻はすでに終電を迎える頃だった。遅くまでかかった残業を思うとはらわたが煮え繰り返る。同僚の立会人のせいで事後処理が遅れたのだ。必ず、この恨みは後日に晴らすとして。
    『門倉さん?』
    「聞こえていますよ。大丈夫です」
    『なんだか、機嫌悪くないですか?』
    「そりゃあ、どっかのバカのせいで仕事する羽目になりましたからね。せっかくの半休が台無しです」
    スピーカーホンにしたスマホから漏れる彼女のの乾いた笑い声がした。おそらく梶の脳裏には急務の報せを受けて凶相になった私を思い浮かべたかもしれない。
    『本当に、お疲れ様です…。門倉さんにしか出来ないことだから、仕方ないですよ』
    梶の宥めるような声がささくれ立った私を落ち着かせてくれる。
    「梶、眠くないん?」
    『んん…、もう少しだけ』
    「また薄着のままでいたら、あかんよ」
    『でも、かどくらさんとはなして、いたい…』
    どこか力が入らなくなってきてる彼女の声に眉をひそめる。共に過ごせなかった半日を名残惜しむのはいいが、前科があることを忘れてはいまいか。
    「明日、無理やり休みもぎ取ったから、いつでも話せるよ」
    『え……、ほんと?』
    「ガチやぞ」
    『ふふっ……、ファ………。ごめん、ねむ……』
    「梶?」
    『…………スゥ………』
    ため息が出た。こうなったらもう早く帰って彼女を寝室に連れて行くしかない。ソファで私の帰りを待つ梶のいじらしさは嬉しいが、それによって体調崩すのは本意ではない。



     自宅に帰ると思った通り、ソファの背もたれに半身を預けて眠る梶がいた。手から数分前まで耳に当てていたスマホを取り上げる。起こさないよう、彼女の身体を抱き上げて寝室へと運ぶ。
    「んぅ…………」
    ベッドに降ろして掛け布団をかけてやると温もりを求めて身じろいだ。冷えは油断の大敵だというのに。いつまで経っても自身の体調を気遣わない梶に明日どのようにしてわからせてやるべきかと思案していると。
    「……かど、くらさん?」
    「はい、ただいま帰りましたよ」
    「おかえり……」
    「もう寝てろや」
    「…………さむい、から、きて…」
    脱いだ黒ジャケットをハンガーにかけ、梶の隣に横たえる。向かい合った彼女の手は冷え切っていた。また漏れそうになるため息を押し殺して梶を抱き込んで目を閉じた。



     彼には申し訳ないと思う。冷え性な僕のために色々と尽くしている。そんな性質を利用して門倉さんの温もりを味わう。素直になれない僕が必死に編み出した姑息な手段。ずるい女でごめんなさい。
    本当は仕事を邪魔してはいけないとわかっているんです。でも、行ってほしくなかった。せっかく久しぶりにゆっくりできると思ったのに。
    わがまま言えない代わりにあえて待つことだけは許してください。
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    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615