子守唄クロック 草木も眠る静かな夜。時計の秒針が厭に耳に残る時間帯に、ふと目が覚めてしまったオレは何度寝返りを打ってみても再び寝付くことができず、同室のサクラくんを起こさないようそっと部屋を抜け出していた。朧げな非常灯を頼りになんとなく廊下を歩いていると、共有ルームの間口からほのかに明かりが漏れていることに気づく。次いで、トントントントン……と何やらリズミカルな音も聞こえてきた。
「こんな時間に誰ですかねぇ〜?」
あんまり知らない人だったら声かけ難いな……。気づかれないように、と。ひょっこり顔を覗かせてみれば、併設されたキッチンから芳ばしい香りが漂ってきた。思わず、ぐぅうう…と腹が鳴る。
「ぁ……。やべ」
「じゅん?」
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