ALL とうけん オリジナル し~んMOURNINGただの昔話よ山間の大きな古屋敷。箱を四方八方に連ねて繋げた迷路のような家。邪神を封じるために作られたのだという。夏休みの恒例行事――古屋敷での肝試しは俗習の儀式めいていた。「夜遅くに声をかけられても、けして襖をあけてはいけないよ」私が田舎に訪れるたび、嫌というほど聞かされた話である。祖父母の大きな古屋敷は、からくり箱を四方八方に連ねて繋げた迷路のような家であった。古くは戦国初期、室町時代の高名な坊さんが、この土地を荒らしてまわる「くちなわ」を封じるため、ギリシャ神話の迷宮(ラビリンス)のように、延々と曲がったり伸びたりする、大きな屋敷を作らせた。この「くちなわ」は山の峰を二周分するほどの、巨大な頭腹尾をもっていて、這いずるたびに土砂が崩れては、大雨をふらせて川を反乱させたり、濁った水で田畑を押し流したり、近隣の村々を困らせていた。この噂を聞きつけた先の京師、京都に住まった坊さんが、ある外法を用いて封じられたのだという。この古屋敷に暮らす、地主の子孫には、ある昔話の掟が伝わっていた。決められた廊下順に歩かねば、古屋敷の奥に封じられた「くちなわ」の部屋には辿りつかない。 635 し~んMOURNINGこれ(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8789018 )のつづき 1468 1