甘い宝石は幸せの味 お茶会というものには縁のない人生であった。
僕にとっての甘いものといえば、偶然拾った果実や、母が特別な日に用意してくれたお菓子で、ごくたまに食べることができるその時間を大切にしていたのを覚えている。
荘園では食べるものに困らない。毎日殺し殺されのゲームに参加さえしていれば、朝昼晩と食事が用意される。それも無償で。
それだけで満足だった。腹が満たされれば充分だったし、荘園の食べ物はなんだって美味しいから、毎日食べられるだけありがたかった。
そんなある日、部屋の扉が軽い音でノックされた。コツンコツン、と小鳥の嘴で叩かれるみたいな小さな音で、聞き馴染みがない。そっと扉を開けてみると、誰もいない……と思って視線を下げたら、小さな子どもの姿をした木製人形がこちらを見上げていた。
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