処女と酒場 お酒というものは、本当に恐ろしいものです。私がまだ雛鳥のように幼かったころ、道端で
「嬢ちゃん、大きくなっても酒なんて飲むもんじゃねぇぞ」
と酔っぱらったオジサマに話しかけられてお酒の恐ろしさをたっぷりとご教授いただいたことがありました。忌々し気に彼のおっしゃるには、お酒は心地よい気分だけではなく、頭痛に吐き気、歩行困難に人間関係のもつれをも引き起こすとか。感情は昂り、いつもはしないような行動をしてしまうのだと地を這うような声で話す彼の語り口に、最初は興味津々で聞いていた私もついには震えあがってしまいました。なんと恐ろしい飲み物なのでしょう。
……語り終えて満足そうなオジサマが屈強な警察官に、まるで童謡に出てくる子牛のように引きずられていく光景を見ながら、私は幼いながらも心に誓ったのです。
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