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    megalomania32

    めがろ@megalomania32のポイピクです
    だいたいいかがわしいです

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    megalomania32

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    「禰󠄀豆子ちゃんは俺が守る」が、守るものが増えてどんどん変化していったらいいなと思ったのにやたら暗くなったので供養。冬に書いたきりすっかり忘れてた。
    三人称を練習しようと思ったんです…

    守りたいもの 雪が降る夜。

     しんしんと雪が降る雲取山の麓。
     我妻家の寝室では、善逸と禰󠄀豆子に挟まれて三人の子供が穏やかな寝息を立てていた。
     禰󠄀豆子はいつも、一番幼くてまだお乳を飲んでいる次男とくっついて寝るが、今日は珍しく長男と一緒に寝ていた。妹と弟が生まれ、お兄ちゃんとしての振る舞いが増えた長男。夫よりもどちらかというと兄の炭治郎に似てしっかりした長男に、つい頼ってしまう。でも、まだまだ甘えたい盛りの三歳。今日はかぁかと一緒に寝ましょ、と言ったときの、長男の嬉しそうな顔を思い出しながら、禰󠄀豆子は幸せな気持ちで眠りについた。

     善逸と結婚して子を授かった。家族がいなかった二人に新たな幸せを運んできてくれた子供たちは、何よりも大切で愛しく尊い。禰󠄀豆子だけに注がれていた善逸の深い愛情は、子供たちにも惜しみなく注がれていった。穏やかで、美しくて、宝物みたいな日々だわ、と禰󠄀豆子は思っていた。

     この幸せが大きくなればなるほど、ふとした時に不安と恐怖を感じてしまうのも事実だった。もし、この子たちや、善逸さんを失ってしまったら…と、考えてしまう度に、禰󠄀豆子は自分を責めた。そんなことは、もうあるわけがない。鬼殺隊が命を賭して勝ち得た日々だ。無惨も鬼も、もういない。

     最近はそんな不安を感じることもなくなってきていたのに、長男を抱いて寝たこの雪の日。



     夢を見た。

     長男は、あの頃の六太と同じくらいになった。あれからもう十年近く経つというのに、禰󠄀豆子の記憶の六太はあの頃のまま成長していない。それどころか、真っ先に思い出してしまうのは自分の腕の中で鮮血に染まり、冷たくなった六太。もっと、あどけない可愛さで舌足らずに喋る可愛い弟の記憶があるはずなのに、思い出せるのは助けを求める最期の声と、悲壮な表情だけだった。

     竹雄、茂、花子の泣き叫ぶ声と、お母さんが身を呈して自分たちを守ろうとしながらも、血飛沫をあげる凄惨な光景。禰󠄀豆子が見た、家族の最期。夢か現か、もうわからないくらい見た惨劇は、我が子に置き換えられようとしていた。

    ──ダメ! やめて! お願い! やめて‼︎


    「……う! うっ…!」

     魘されていた。
     目を覚ますと、汗をびっしょりかいて、涙が溢れていた。全力疾走したかのように、呼吸が乱れている。一番離れたところに寝ていたはずの善逸が、飛び起きて禰󠄀豆子に駆け寄った。

    「禰󠄀豆子ちゃん! だ、大丈夫…?」

     禰󠄀豆子が呆然としながら起き上がって、あたりを見回す。慌てて、腕の中にいた長男と子供たちを見ると、すやすやと眠っていた。あたたかい体温を感じると、またぼろぼろと涙が溢れてきた。体の震えが止まらない。

    「……っ、ぜんいつさん…ぜんいつさん」
    「大丈夫だよ、禰󠄀豆子ちゃん…大丈夫」

     善逸が、震える華奢な体を抱き締める。音の乱れが尋常じゃなかった。

    「ひっく、うう…っ、う」
    「大丈夫だよ、俺がいるよ、禰󠄀豆子ちゃん」
    「…っ! う、ぐすん、ひっく…!」
    「禰󠄀豆子ちゃんも、子供たちも…俺が守るから」
    「ひぐ、うん…う、うっ」

     わあわあと子供みたいに泣いてしまいたかった。とめどなく流れる涙が、善逸の肩を濡らしていく。出会った頃から変わらない、真っ直ぐで強くて優しい善逸の思いが、暗く落ち込んだ禰󠄀豆子の心を照らす。あの頃から何年経っても、子供が生まれても変わらないことに安堵する。安心すると、また涙が溢れてきた。

    「こんな、こと…ひっく、もう、ないって、わかっ…ぐす、わかってるのに…」
    「うん…」
    「ふ、不安に…なって、ひく、なっちゃうの…もし、あ、あのとき、みたいに…っう」

     話すたびに善逸の腕の力が強くなる。子をあやすように、トントンと背中を優しくさする。

    「こんな、こんなこと…考えたく、ないのに…っ!」
    「…うん」
    「いまが…とっても、しあわせだから…ぐすっ、いつか、失ってしまったら、どうしようって…」
    「…禰󠄀豆子ちゃん」
    「こわい、こわいよ、ぜんいつさん…!」
    「禰󠄀豆子ちゃん、大丈夫、大丈夫だよ」

    「禰󠄀豆子ちゃんのことも、子供たちも…俺が、必ず守るから」

     そんなことあるわけがない、とは言わない。絶対起こらないなんてこと、この世には存在しないのだと一番よく分かっているから。肯定した上で、必ず守ると言って安心させてくれる。誠実で嘘をつかない夫のこの言葉が、何よりも重いということを、禰󠄀豆子は理解していた。

    「禰󠄀豆子ちゃんから、二度も家族を奪うなんてこと…絶対にさせないよ」
    「っう、う、うぅ」
    「禰󠄀豆子ちゃんは…俺の想像もつかないような、辛い経験を乗り越えてきてるんだから…不安になるのは当然だよ、自分を責めないで」
    「ぐすっ、あ、ありがと…ひっく、ぜんいつさん、ありがとう…」

     禰󠄀豆子を毛布ごとひょいっと抱き上げた善逸が、足で襖を開ける。
    「つらいときは、泣いていいんだよ…ちょっと、むこう行こうか」

     まだ明けの明星も見えない冬の朝は、体を芯から冷やす。うう、寒い、と呟きながら善逸が火鉢に火を入れると、毛布にくるまったままの禰󠄀豆子に向き合い、膝の上に乗せた。

    「よいしょっと…おいで、禰󠄀豆子ちゃん」
    「う、う……っ、わあぁぁ!」

     善逸の胸に顔を埋めて、不安を全て吐き出す。あたたかい腕が、禰󠄀豆子の悲しみも不安も何もかも包み込んで、少しずつ氷が融けるように涙が流れていく。まるで、長く寒い冬が終わり、雪解け水が流れるように。

     少しずつ落ち着きを取り戻した禰󠄀豆子は、泣き疲れたのか安心したのか、こっくりと船を漕ぎ始める。よかった、と善逸は安堵すると、涙を拭い、頬にそっと口付ける。

    「禰󠄀豆子ちゃんも、子供達も…俺が守るよ」
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