「水木さんって、あたしの旦那様とイイ仲なの?」
銀座のパーラーのど真ん中で、クリームソーダを吹きかけるところだった。
思わず空気と一緒に飲みくだしたせいで、しばらくおかしな咳が止まらず、周囲の客にジロリと睨みをきかせられた。
にも関わらず、目の前の垢抜けた人妻ときたら、キャタキャタと悪びれずに笑うばかり。本当に。幽霊族ときたら、どいつもこいつも。水木は頭を抱えたが、それでもこの美女をピシャリと怒鳴りつけるような気にはどうしてもなれないのである。
水木だって、彼女が笑っているだけで、奇跡と幸福を感じずにはいられない。
だから多少のことは大目に見る。見たい。見ようと思っている。……が。
「奥さん。本当。そういうこと。よそで吹聴していないでしょうね?」
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