軽くて薄いのがいい「リコ」
なんとなくの勘で休憩に入ってすぐ店の裏口にむかうと、濃紅の色が視界に飛び込んでくる。気怠げな仕草で呼びかけに首だけ向けたリコが軽く目を見開いた。雑然とビール樽やストッカーが積まれた裏口に軽く目をやり、どうやら連れはいないらしいということを確認して歩み寄ると、懐から携帯灰皿を出してタバコの火を消す。何も口にはしないが、その目に軽く棘があるのには気づかないふりをした。
「……なに、アンタ具合悪いんじゃないの。まさかシフト入ってないよな」
「今日は荷物取りに来ただけ。それにもう治ったよ」
病人が出歩くなと言外に言われ、こうして出歩ける程度ではあることを見せてもリコは疑わしい目を向け続ける。病人扱いされることは愉快ではないが、その目の奥にある気遣わしげな色を隠しきれないのを見ても反発する気持ちは湧いてこなかった。これが他のチームの人間であればまた違っただろうが、実際にヒースが調子を崩すたびに直接の迷惑を被るのだからやはり態度は他とは違ってくる。
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