確定的な言葉はなかったけれど
「傷・・・」
量は食べるくせにがりがりの背中に浮かぶのは火傷のてんてんとした痕をなぞろうとする指を、手を掴んで「汚ねぇもん見せて、ごめんなさい」とカイザー君は言った
実際のところ、こんな仲になってからでも
彼が実家の事について俺に話すことは無かったから、逆に彼がどういった環境で生き抜いてきたのかが察せられた。
やせ細った身体には傷跡と寝食惜しんでも働いた痕がこびり付いていて
何にも言えなくなって
なのに、信じてほしくて掴まれたままの手を振りほどいて、彼の頭を抱きしめた
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう抱きしめた
君の傷を無くすことができないのならいっそ
「生きててくれてありがとう」
傷を負ったままの、あの日の君すら抱きしめるように、必死で抱きしめた。
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