おれは。
おれは、キルバーンの野郎が大嫌いだ。
多分、この世で2番目に嫌いなやつだと言っても過言じゃねえだろうぜ。
でもよ、なんだかんだ、あいつに助けられた形になったんだよなあ。あいつ……正確には『ピロロ』がよ、おれがこうしておまえに会うための、最後のヒントをくれたんだ。
……うん。
おれ、信じられないよ。目の前にいるおまえが、本物じゃなくておまえそっくりの人形だなんて。
人形っていうか、写し身、だな。機械仕掛けじゃなくて魂を移して動かす。人形の中に入ってるのは間違いなくおれの魂だし、呪文は魂で契約するもんだから魔法も使える。魔力操作の範疇だから禁呪もギリギリ侵してねえ。
もっとも、おれの本体は眠ったままになっちまうし、本来の肉体じゃねえから魔法力は半減して、メドローアもせいぜい3発くらいしか撃てねえだろうけどな。
3発撃てれば十分だと思うけどなあ、おれ。
いやいや、これからおまえらと一緒に魔界で戦ってく戦力としてはちっと心もとねえっていうか、……すまねえな、ダイ。こんな中途半端な役立たずになっちまう形でしか再会できなくて。
……でも。でもよ。
例え役立たずの足手まといになったとしても、おれはおまえのところに行きたかったんだ。おまえの隣に立つのはおれの役目だって、魔界の連中にも示してやりたかった。……はは。結局、おれの意地でしかねえな。
………。
…………ううん。
そんなことない。
おまえは役立たずにも足手まといにもならないし、おれも……おまえにそばにいてほしいって、本当はずっと思ってた。
あんな別れ方したくせに、竜の騎士の使命を果たさなくちゃいけないのに、人間は魔界には来られないの、知ってたくせに。
おれ、寂しかった。おまえに会いたかった。
……ダイ。
ありがとう、ポップ。こんなところまで来てくれて。
……へへ。厳密にゃ、おれじゃなくておれの写し身が、だけどな。
あはは。そうだね。あははは。
そういえば、おまえ、キルバーンが世界で2番目に嫌いだって言ったけど。じゃあ、1番は何なのか、教えてくれよ。
ええー。おま、それ聞いちゃうのかよ。
おれが世界で1番嫌いなのは、ほら、分かるだろ。おれ自身に決まってるだろ。
ああ。分かってたよ。おまえはきっとそう答えるだろうと思ってた。
あのさ、ポップ。
おまえにとっては世界一嫌いなやつかもしれないけど。
おれは、ポップのこと、きっと誰より大好きだよ。