貴方の世界を 夜。
ラウンジの方で作業しているとやや乱暴気味にドアが開けられた。僕とフロイドが同時に振り向く。案の定、彼がため息を吐きながら入ってきた。
「まだ残っていたんですか」
「えぇ。例のマルシェで出すメニューの考案を」
「あぁ……期限までまだ時間があるから、あまり焦らなくて良い。僕も案出したいし」
「かしこまりました」
僕は頷き、ノートを閉じた。もとよりそんな気がしていたので、さほど真剣には考えていない。
「てかアズールまだ起きてたの?明日早いんでしょ」
「荷物の準備をしていたんだ。忘れ物でもあったら困るだろう」
ラウンジのソファに倒れ込み、またため息。どうやら今回の相手には少々手を焼いているらしい。
文字通り———この堅物な友人の、胸の、奥底を焼くような人間がいるようなのだ。
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