五話 黒コートの正体 首にあてているカッターナイフに力をこめようとしたとき、突然外が騒がしくなってきた。
「随分と町が騒がしいと思ってきてみれば……お前ら、何やってるんだ?」
声が聞こえた。大きくはないが、低く、威圧的で冷たい声だ。
「門番だ! 奴が来たぞ!」
「慌てるな! 数の利はこっちにある。一斉にたたんじまえばいい話だ!」
直後、無数の金属をぶつける音が聞こえた。男たちが持っていた鉄パイプで何かを殴りつけたのだろうか。私はカッターナイフの刃をしまい、何とか外を見ようと麻袋の穴を探す。丁度片目でのぞき込めるような穴があったので、恐る恐る外の様子を見る。明かりが少なく、ぼんやりとしか見えなかったが、男たちが一人の人間に向かって鉄パイプを振り下ろしているときだった。
6820