エンドロールは止まらない「イカレ裏切り野郎様、おはようございます」
旅人を旅をしていた頃、毎日のように聞いていた機械音声にも感じられる女の声が響いた。
「イカレ裏切り野郎様、早く起きてください」
暗闇の中、微睡むようにぼんやりとしていた意識が覚醒していくのを感じる。長らく忘れていたようなその感覚を、男はとても鬱陶しく思った。
「イカレ裏切り野郎様、いい加減に目を開けてください」
男の気持ちに関係なく声は変わらず罵倒と催促を繰り返す。
このまま狸寝入りを決め込んでいてもきっと女の声は消えないだろう。そう思った男は仕方なく目を開けた。体も意識も、なぜか泥のように重い。
「ようやくお目覚めになりましたか。イカレ裏切り野郎様」
開けた視界はどこまでも白く、相変わらず動かない体は厳重に拘束されていることを知る。唯一自由の効く首を動かして音が聞こえた方を向けば記憶にある声と違いない、いつもの冒険者協会の服を着たキャサリンがいた。
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