「何がホワイトクリスマスだよ」
「雪道のゴミ出しはご苦労だな」
「…お前道こっちだったっけ?」
「…乗っていきたまえ」
バタン、という音と共に
成歩堂が隣に座る。
12/25
クリスマスか。
私にとっては、あまり良い思い出ではない。
雪も。
信号が青になった。
あれから―
もう
頭の中に鳴り響いていた音も
聞こえない。
だが。
*******
「…おはよう」
「ああ」
今日は朝から雪景色だ。昨日からずっと降り続いていたのだろう。
君は機嫌が悪くなるだろうか。
「なーにがホワイトクリスマスだよ。
サンタさんもさ、プレゼントなんて要らないから
ゴミ出ししてきてほしいよ」
布団からやっとの思いで顔だけ出した君は、まだ眠そうだ。
「サンタクロースが運ぶ物は、もう少し夢のある物が良いと思うのだが」
宵っ張りから返ってきた言葉は
「あ、御剣ん家だから出せないじゃん。なぁ、ここっていつでもゴミ出せるんだろ?今度来る時さ…」
「そのような所帯染みた言葉よりも
もう少しドラマティックな言葉を聞きたいのだが」
まぁ確かに、何かを贈り合うのもいいが
不要なゴミは捨てたい物だな。
私のこの気持ちも…
「ちぇ」
口を尖らせている。可愛い。
*****
「この時期毎年君は不機嫌だな、成歩堂」
事務所まで乗せていく車内で、私は聞いた。
「…ぼくだけ楽しそうに出来ないだろ」
お前毎年辛そうだから。
そう付け加えると、恋人はそっぽを向いた。ふ、と見ると耳まで真っ赤だった。
勿論、信号に引っ掛かった時にだとも。
隣に居てくれたのが君で良かった。
自分ではどうしようもない…私の心を
君はほどいてくれた。
あの闇の中に
沈みそうだった私の心を。
「成歩堂。私は今まで、君と一緒にこの日を
過ごすことを恐れていたのかもしれない。
もしも、君と楽しい時を過ごしたとしたら
万が一その幸福な時に君を失ってしまったらと
そう思っていたのかもしれない」
「…なんだよ改まって。ぼくはどこにも行かないって。
…だから?」
「だから、
来年からは、ツリーもリースも用意しよう」
「い、いいよ!そんな…
…ぼくは
徹マンでも良いけどね」
「君はよく振り込んでくれるからな」
ワイパーが雪を攫って行く。
雪の色は何色なのだろう。
「ぼくの捨て牌でロンするの止めろよ!」
君の声が街に吸い込まれてゆく。
色か…白では冷たすぎる。
君と過ごすこの景色は
あたたかい。
ゆきのいろは…心なしか
「面子揃って打つ時だって頭ハネやめろよ!」
もう、私は君の声だけ聞いていよう。
生涯君に恋する、自分の心の声だけ聞いていよう。
この雪になら、安心して身を任せられる。
バッジ持ってないので言うこと聞きません(🎄に🀄️打ってた人が書きました)