揺らぐ月の揺り籠(浄宗)「宗雲、入っていいかい?」
言いながら休憩室のドアを左手でノックする。右手にはトレイの上に乗ったティーポットと温めたティーカップが二つ。ホットドリンクは別に用意しているが、この陶器達は客には出さない、お疲れ気味なことが多いこの店の支配人様の為に用意しているものだ。
シンプルだが品の良い質感のそれらが中の液体ごと冷める前に、室内にいる自分の声に気付いたその人から了承の言葉が聞こえた。
返事に少々時間がかかったことが引っ掛かりつつも扉を開けると、仕事が嫌と言うほど詰まったタブレットをテーブルの上に無造作に置き、休憩室のソファーの背もたれに寄りかかって天井を仰いでいる高級ラウンジウィズダムの総支配人、宗雲がいた。
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