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    ys1347

    @ys1347
    おそチョロ
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    ys1347

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    大丁(おそチョロ)です。
    メーカーさんのお題「推しカプが二人で酔っ払ってそのままセックスする」で書かせていただきました。一応R18です。いいねしてくださった皆さまありがとうございました。

    ずるいひと「上等な酒が手に入った」と夜更け前にやってきた時は、なんて非常識な人だとしんそこ呆れた。
     家主はすでに床に就いているかもしれない、と想像を働かせることは出来ないのだろうか。玄関の戸口を叩くけたたましい音にただ事ではないと羽織を引っ掴んで慌てて来たのに。玄関先にはてんで悪びれる様子もなく、人差し指で鼻の下をこする大蔵の姿があった。
    「…あなた今何時だと」
     ため息を吐きつつ尋ねると、返ってきたのは案の定平然とした声。
    「十二時前?」
    「…ああ、もう答えなくて良いです。…お仕事は?」
    「いま終わったとこ」
     明日非番なんだ、と続けて、寒そうに肩をすくめる。すっかり秋めいてきた九月の夜の風は、確かに冷たくて骨に沁みた。
    「中、入れてよ」
     戸口に片方の肘をついて、含みのある笑顔で囁く。玄関灯に照らされた大蔵の顔にはどこか色香が漂っていて、すぐ後ろには夜の暗闇が広がっている。とん、とその胸を押せば簡単に夜の世界に包まれてしまいそうな危うさがあった。
     お引き取り下さい、と無下にあしらうほど鬼でもない。大きく息を吐いてから、観念して後ずさりをする。
    「…どうぞ」
    「ありがと」
     大蔵が玄関の敷居を跨ぐ様子を眺めてから、戸を締めて施錠する。戸を締める直前に仰ぎ見た今日の夜空は今にも泣き出しそうなほど重く、薄ぼやけた月が浮かんでいた。
     草履を脱いでから居間へ行くと、大蔵が所在なさげに佇んでいた。まるで我が家のように横柄な態度を取られても腹が立つが、慎ましくされても落ち着かない。丁呂介はいったい、この男になにを求めているのか。自分でも分からなくなった。
     大蔵の手には一升瓶が握られていた。上等な酒、というだけあって、金色のパッケージに包まれていて特別感が漂ってくる。値の張る純米大吟醸もまさか片手でぞんざいに扱われることになるとは思わなかっただろう。
    「…お夕飯は食べましたか?」
     声を掛けると大蔵が振り返る。
    「十五時くらいに事務所でカップ焼きそば食べた」
    「…あなたの時間感覚どうなってるんです」
     夕飯と聞いたんです、と窘めてから、簡単なものしか出せませんよ、と炊事場に向かった。
     夜も遅いということもあり、胃に負担を掛けるものは意識的に避けた。手作りのもろみ味噌があることを思い出し、豆腐とたたききゅうりを皿に盛りつける。食器棚から取り出した徳利とおちょこをふたつ、すべて盆に乗せてから居間に戻る。
    「お待たせしました」
     丁呂介の顔を見るなり、長机に頬杖をつく大蔵が子どもみたいに幼い顔で笑ったので、なぜか胸が苦しくなった。誤魔化すように瞬きをしてから、畳に膝をつき、大蔵の向かいに座る。
    「常温で良さそうですね」
    「うん。開けるね。――わ、うまそ。いま作ったの?」
    「作ったといっても盛り付けただけですけど。あとで鮭でも焼きましょうか。お茶漬けもできますよ」
    「まじ? 食べる」
     声を弾ませつつ、大蔵が目を細める。その笑い皺を視線で辿っていると、ちゃんとしたご飯久しぶりかも、なんて聞き捨てならない言葉が飛んできたので、思わずお節介を焼いてしまった。
    「私はあなたの食生活が心配です」
     待ってましたと言わんばかりに絶妙なタイミングで大蔵が言う。お行儀悪く、肘をついたかっこうで。
    「じゃあ丁呂介さん、俺の食事の面倒見てくれる?」
     ほんの一瞬目が合って、すぐに逸らした。
    「…お断りします」
    「ちぇっ」
     期待しちゃった、とつまらなさそうな声を無視していると、大蔵がお酌をしてくれた。とっとっと、と小気味良い音を立てて、まろみのある日本酒が注がれていく。最初の一杯だけ、と言って今度は丁呂介がお酌をした。揺蕩う寝間着の袖を片手で抑えつつ、徳利を傾ける。
     軽く乾杯をしてからおちょこに口をつけた。くっと一口分口に含み、酒の味を確かめるようにして飲み込むと、さわやかな香りが鼻孔を掠めた。確かに、上等な酒だ。
    「…美味しい」
    「うん、うまいね」
    「…大蔵さん、もう飲んだんですか?」
     小ぶりの器とはいえ、一口で飲み干してしまったらしい。二杯目を注ごうとしたら、簡単に断られてしまう。
    「あ、いいよ、手酌で。…これ、食べて良い?」
    「ああ、もちろん、どうぞ。お口に合えば良いのですが」
     自分の頬にかかる前髪が気になったので、耳に掛ける。はらはらと指から零れていく髪の毛を何度も掛け直し、酒を飲んだ。確かに、美味しい。
    「―――こんなにも美味しかったら、飲み過ぎてしまうかも」
     ひりひりするほどの静寂のなか、空気の擦れる音や鼓膜が震える音が遠くの方で響いている。心の声が言葉にして漏れていたらしい、と気付いたのは、わずか数秒後のことで、視界の正面に映る大蔵が口角を上げる。大きな瞳が憎たらしいほど揺れている。
    「―――飲み過ぎたら、だめなの?」
     机の下、大蔵のつま先が伸びてきて、正座をしている丁呂介の膝をつつつと突く。
     あっ、と嬌声がこぼれそうだったので、口を塞いで防ぐ。
    「…だめでしょう」
     身じろいで抗議をしたが、目の前の大蔵は余裕綽々の表情で。
    「どうして? 自分の家だよ」
     明日予定はあるの、と聞かれた。その間にも、大蔵は酒を注いで喉を潤している。そのたびに隆起した喉仏が上下に揺れ、目に毒だった。
    「…明日は、夕方から、寄り合いが」
    「夕方からなら、良いじゃん」
     なにが、良いんですか。思うのに、言い返せない。
     いつになくたどたどしい自分の口ぶりに羞恥が募っていく。誤魔化すように酒をあおり、いつの間にか結構な量を飲んでいた。脳がふわふわと揺れ、思考がまどろんでいく。視覚はどんどんとおぼろげになっていくのに、聴覚や嗅覚は研ぎ澄まされていくから困る。大蔵の匂いや声が、次第に色を帯びていった。
     このままじゃ、だめ。
     強く目を瞑る。まなじりが震えるほど、強く。瞼の裏にちかちかと点滅した光が見える。からだの中心でじんと灯る光と熱。
     本能と欲望をさらけ出すことは、とても恐ろしくて、同時に興奮と期待もあった。はしたなくていやらしい想いを、お互いに抱いていることに気付いているのに、とうてい受け入れられることではない。
     でもいつか、体を重ねるかもしれない、と思っていた。遅かれ早かれ、そうなるんだろう、と。本当に、馬鹿みたいに。
     それはどこか確信めいていた。滑稽で尊くて、相成れない感情が渦巻く。
     ことによれば今夜かも、と思った瞬間、突風に吹かれたみたいな衝撃が全身を包む。
     大蔵が動くたびに、畳が擦れる音がして、気が狂いそうだった。
    「…さっき、寝るところだった?」
     目も合わせず、伏し目がちに大蔵が尋ねる。
    「…当たり前でしょう、こんな時間ですよ」
    「起こしちゃった?」
    「…寝る直前だったから、起こしてはいないですけど」
    「迷惑だった?」
    「迷惑には違いないです」
    「辛辣」
     困ったように眉を下げたあと、「トイレ」と言って、立ち上がる。ふらついていたので心配したが、しっかりとした足取りで歩き出したので胸を撫で下ろした。
     大蔵がいなくなった居間でひとり、テーブルの上を見回す。丁呂介が用意をした料理はすべて、大蔵の胃袋の中に消えてしまった。綺麗に平らげてくれたことが素直に嬉しくて、しばらくの間、空の器を眺めてしまう。
     しんと静まり返った屋敷内、渡り廊下の奥にある厠から水が流れる音が聞こえてくる。すぐに、とたとたと足音が続く。近付いてくる大蔵の気配に、むしょうにどきどきした。
    「お待たせぇ」
     予想していたタイミングで居間に現れ、のんびりとした声で笑う。そのまま元いた場所に腰を下ろすかと思いきや、あろうことか丁呂介の隣にやってきたので面食らってしまった。
    「な、な、な、なんですか」
    「せっかくだし、近くで飲もうよ」
    「さっきの距離でもじゅうぶん近かったです」
    「そう? 丁呂介さんは俺に近付くのいや?」
     溶々たる表情で言う。ずるい聞き方をする。
     いやです、と言ったところで、離れてくれないくせに。
     ふと視線を俯かせると、足もとがはだけていることに気付いた。咄嗟に寝間着を整え、姿勢を正す。その間も大蔵はじっと丁呂介のことを見つめていた。
    「…お酒、まだ飲む?」
    「…あと一杯だけ、いただきます」
    「飲んだら寝るってこと?」
    「…そうですね、夜も深いですし」
     大蔵がふうんと呟き、両手を畳についた。丁呂介との距離はわずか数センチ。どちらかが身じろげば簡単に触れてしまう距離。
     これ以上近付かれると、心臓の音と息遣い、それから、浅はかな想いが溢れてばれてしまいそう。
     きっかけなんてきっと、何でも良かったのだ。酒を理由にするのはあまりよろしくないが、きっとそれでも良いし、明日の非番が理由でも、夜空に星が浮かんでいなかったことが理由でも良い。
    「最後だし、お酌させて」
     断る理由もないので、「ええ」と呟いて、とくとくと注がれる酒を眺めた。
    「どうぞ」
     優しい声が降ってきて、視線だけで礼を伝えた。机の上でおちょこを受け取る瞬間、指先が触れ、まるで雷に打たれたような痺れが全身を襲った。そのまま杯ごと手を握られた。指先も吐息も心も、熱くてたまらない。
    「…ん、あ、だめ、だめです、大蔵さん」
    「………だめ、って顔されたら、俺も考えるんだけど」
     ごくりと唾を飲み込み、「だめって顔、できる?」と聞かれた。
     できる。でも、今夜はできない。呼吸のくすぐったい距離でいじわるを言わないで。
     鼻先と鼻先を擦り合わせた焦れったさの波に飲まれても、この期に及んでいやいやと首を振ってしまう。手を握られたときに衝撃で酒が零れ、指が濡れた。てらてらと酒を浴びた指を躊躇なくくちもとに運んだ大蔵が、「もったいない」と言って人差し指から順に食んでいく。
    「あっ、…ん、や、だめ、汚い…です…」
    「美味しいよ?」
     それはお酒の話でしょう。目を見ながら、爪の形や手相をたしかめるように舐められて背中がぞくぞくとした。
     そのまま腰をぐっと腰を引かれる。咄嗟に大蔵の胸元に手を当てて押し返そうとしたが、自分の力の頼りないこと。
     少しでも視線を上げたら、くちびるが触れてしまいそうだった。
    「顔、上げてよ」
     大蔵の声はまるで引力だ。触れているところも鼓膜を震わす声もあまりにも気持ちがよくて、ゆるゆると顔を上げようとした瞬間、大蔵に制された。
    「…ごめん、ちょっと待って。…あのさ、俺、ちゃんと好きだから」
     それから頭の後ろに手が伸びてきて、ぐっと引き寄せられた。視界いっぱいに広がる大蔵の胸、しわくちゃのネクタイ、はだけたシャツ、くたびれたボタン、眩暈がするほどの大蔵の匂い。
     抱きすくめるようにして、何度も髪の毛を梳かれた。束になった髪の毛を指の腹で擦ったり、指でといだり、何度も撫でたり。こちらにも緊張が伝わってくるほどの芯の通った声で言う。
    「丁呂介さんのこと、ちゃんと好きだよ」
    「…ちゃんと、ってどういう意味ですか」
     真剣な場面でも、恥ずかしさのあまり揚げ足を取ってしまう。でももう、猛スピードで加速していく心臓の音で、すべてばれているはずだ。案の定、くつくつという大蔵の笑い声が響いて、丁呂介の全身を震わせる。
     興奮と歓喜で忙しない心を必死に落ち着かせていると、大蔵が独り言のように呟いた。
    「順番、ちゃんとしなきゃと思って」
    「…どういうことです?」
    「好きって伝えてから、したかったの」
     抱きしめられていた腕の力が弱まり、からだを解放される。僅かに距離を保ち、それでも世界で一番近い距離にいる大蔵が、困ったような、泣きそうな、複雑な表情を浮かべた。
    「…順番、間違えたら、丁呂介さん、不安になるかと思って」
     ねえ好きだよ、キスしていい、と聞かれた。どうしようかな、と答えると、大蔵があからさまにさびしそうにした。
     そんな繊細な想いを持ち合わせているとはとうてい思えなかったので、正直ちょっと感動したし感心もした。かたや丁呂介は、酒のせいにしてもやぶさかではないと思っていたのに。さすがにそればかりは言えない。申し訳ないけど、ちょっと可笑しい。今夜は大蔵に秘密が出来てしまった。
    「…うそです。して? キス、してください」
     目を閉じる。ごくり、と大蔵の喉が鳴る音が聞こえて、両肩を掴まれる。痛くはないけど熱い。すぐに、ふに、としたやわらかい感触がやってきて、キスしてる、と思った。
     気持ち良い。キスって、こんなに気持ち良いものなんだ。
     自然と口を開くと、覚束ない舌が伸びてきた。わけもわからず舐め取り、舐め取られ、食んだり吸ったりを繰り返した。息が苦しい。目頭が熱くなるほど。
     息も絶え絶えにくちびるを離すと、二人のくちびるとくちびるを繋ぐようにして唾液が伸びた。粘り気のある一筋の唾液が空を彷徨って落ちる。目の前の大蔵はなけなしの理性と戦っているみたいで、瞳には獰猛さがにじんでいた。
     堪らなくなって舌を突き出すと、すぐにまた食まれた。そうして、口のなかへ誘われる。
     お行儀の悪い手が伸びてきたかと思うと、腰ひもを緩められる。自然と揺れる腰のおかげで、どんどんとはだけていく。
    「…肩、寒そう」
     自分で解いたくせによく言う。むき出しの肩にちゅっとキスを落としてから「上乗れる?」と尋ねてきた。丁呂介のくびれた腰を愛しそうに撫でる。
    「…押し倒したいけど、布団もなにもないし、体痛いかも…と思って」
     そんな気遣いが出来るとは。目を瞬かせて驚いていると、大蔵が「なんだよ」とぶっきらぼうな声色で照れた。
     大蔵の上に跨り、性器を重ねるようにして擦り合わせる。
     背徳感と羞恥と快楽で綯い交ぜになった心はひどく興奮している。弾んでいる。素肌はまるで吸い付くようでやわらかかった。
    「…妹、大丈夫?」
    「いま、…ここで、聞きますか?」
     大丈夫じゃなかったら、そもそもあなたを今夜家に入れてません。それくらいの覚悟があった。最初から。伝わるようにくちびるを重ねた。
     ぐちゃぐちゃといかがわしい音が響いている。自分の口から零れる甘ったるい嬌声が信じられなかった。
    「…あ、ん、こすれて、すっごい、きもち、い、です、…ん、あん、やぁ…―――」
    「ちょろすけ、さん、…めっちゃかたくなってるよ」
    「んんっ、言わないでください…あっ、あっ、あっ」
     先走りで濡れる先端同士を刺激しながら、後ろを撫でられた。初めて感じる感覚に、背中が戦慄く、脳が痺れる。
    「あっ、や…だめ、そんなの、はいらないです…あぅ…」
    「今日は、ん、触るだけ、にしとくから…やば、俺、もう出そう…」
    「…んっ、や、あっ―――」
     正気では聞いていられない声、自分のみだらな姿に、興奮すら覚える。気付いたときには互いの腹に熱を吐き出していた。からだが濡れてしまうこともお構いなしに、大蔵の上に覆いかぶさり、呼吸を整える。
    「…はぁっ…ん、あっ、…せっかく、湯浴み、したのに…んっ、やっ、胸、やめてください」
     いま、全身敏感になっているから。だめ、だめです。
     首筋や鎖骨、肩に大蔵の舌やくちびるが伸びてくる。リップ音に耐え切れなくなり、身をよじって逃げようとしたが、がっちりと腰を固定されていて、思う様にいかない。
    「あっ、だめ、…ん、あ」
     体から力が抜けていく。くたくたになった状態で、大蔵に支えられながらなんとか体勢を保つ。気持ち良い。好き。何も考えられないくらいの疲労と快感のなか、大蔵がくちづけるように掠れた声で言う。 
    「…これもセックスだから」
     背中に回された手が熱い。
    「え?」
    「…でも、今度、ほんとに、したい」
     しても良い? と聞かれながら、鼓膜にキスをされた。
     答えなんて決まっているのに。あなたは本当にずるい聞き方をする。
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