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    pluto__iv

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    kmt 夢腐 夢友くん×むざさまの作品置き場💠🌸

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    死後、自分の行為を善行悪行問わず客体として受けるというものがあったなら、そしてむざさまが唯一他者に齎した良いものとは夢友くんがむざさまから勝手に見出し受け取っていたものだったとしたら……と考えてた文章。

    シッダールタを読みながら、オームってなんだろなって。
    「言葉未満の音の連なり」が「結果としての感情」だけを想起させる、みたいな概念面白いなと思ってメモしたかったもの。こんなに長くなるのは想定外
    結果だけが明白な正体不明の原因、どんなものだろうね

    あちこち書きかけでフォーマットも整っていないけれど、お気に入りなので公開しておきます。

    2023/1/25

    ##小説

    円環琥鴞こきょうは囁いた それは言葉を持たない言葉だった その囁きは意味のある音の連なりとは思えなかったが、その響きは私にある種の感情を抱かせた あるいは喜び、あるいは愛しみ、あるいは目眩めくるめく高揚、あるいは深く静かな慈しみを。

    地獄で生前のとがを逆回しに精算し、数多の人間に殺され続ける中、琥鴞の紡ぐ無形の感情、原初の言葉、結果としての感情の形でしか実態を持たないそれの恩恵が、無惨の罪まみれの精算の中で息継ぎのように束の間の安らぎとなった

    私が与えていたのは数多の痛みと死 しかしそれだけではなかったのか いや違う、私は与えようとはしなかった。こいつが勝手に私から受け取っていたにすぎない

    間断なく幻影に斬られ砕かれ咀嚼され殺され続ける中、奇妙な音の響きと煌めくような胸の高まり、生きる喜びを謳う高い高い精神が心の臓に、身体中に染み渡り、静かな、しかし力強い生きる歓びが黄金の溢れる光となって脊髄に灯った

    精算は終わりへと向かい、青年の、少年の、嬰児の頃の過ちがふりかかり、やがて胎児へと、生命の始まりの形へと還っていく 収束していく生命の原初の形は、琥鴞の響きが灯した輝きと混じり、収束し、ひとつの形、無惨の形となった それは生命であった 生きる喜びであった ひとつのほの温かい眩い輝きだった 死や痛みは瞬間だが、生の喜びは脈々と続き、はじめの無形まで残り続けた 否、初めから無惨が持ち続けていたものなのだ 琥鴞の囁きは無惨が与えたものだ 与えたものが還ってきたのだ 無惨にとって唯一価値あるもの、神聖なもの、それは生命だった 生命の輝きを信じ続けたのだった 全てが終わった中、それに気付いた 満足だった 心の呼び声のままに生き続けたのだ いくら自らの所業を罪となじられようと、心の欲するままに生きたのだ 自らの魂の声に耳を塞ぐことなく、裏切ることなく、諦めることなく、呼ばうままに、求めるままに生き続けたのだ 満足だった 一貫していた 還ってきた 死して生命の輝きが手から離れ、初めて認識できた 無惨はそれに満足だった 彼独特の道を最後まで歩み切ったのだ そしてそれは自分自身に完結する満足のみならず、もう一つ別の満足を予感させていた 琥鴞は私のこの生を嬉しく思うだろうと 無惨には確信があった 無惨の内から発せられる光、歓喜する生命の声! それに呼応し感化された存在が、この生き方を、この終わり方をうべなわぬわけがあろうか? 無惨は自身の生のありかたと、琥鴞のものの見方を確信していた 精算を終え、与えたもの全てを、恐怖と痛みと憎しみと死を浴びて尚輝く光、無惨自身の根源とそれを受容したものの一致、それこそが彼自身を討ち滅ぼした想いや絆の原初の姿なのかもしれないと、罪まみれの千年の中でたった一つのぎょくを掬い取り眺めながら考えた 彼に会おう 精算は終わったが地獄での罰はまだ終わらない 長い長い時の中、いつかは彼に合い見える時が来るだろう その時、必ずや言ってやろう 「私は私の生を歩み切ったぞ! どうだ、私は惑いも間違いもしなかった。間違いなく私から始まり、私に終わったのだ。お前はそれを聞いて満足か、きっと満足してくれるだろう。私は実に満足だ! お前もあの輝きを、私の無意識に信じたものを見た。輝きを手放した今も、決してあれに執着し束縛されていたとは思わない。寧ろあれに殉じれたことを素晴らしいとさえ思う! 私は狂人か? 愚物か? お前ならきっとこう言ってくれるだろう、君は一人の人間だったと! 私は何度生まれ変わってもきっとあの光を愛する。ある人は嗤うだろう、ある人は哀れむだろう。だが私はきっと幸福だ、私は私の生活を信じる! 私の下から離れゆく輝きを手放さそうとせぬがため、自然に逆らって輝きを抱え込もうとするがために、何度でも悩み、苦しみ、怒るだろう だがそれでいい 私は安楽のうちに呼吸することを良しとしない あの迸る素晴らしいもの、生命の輝きなしでは生きているとは呼べない、存在しているとは呼べない! お前は輝きを認め憧れつつも聡く静かであるな きっと私と同じものに目を奪われたとしても、この狂騒に進んで身を置きたいとは思わぬだろう それで良い、お前はお前で良い だが、そうだな、欲深くももうひとつ望むならば、私の生き様をまた近くで見、聞き、それを私と同じくらい素晴らしいと感じたならば、それはきっと私もお前も再び満ち足りるだろう。今度は生きながらにして、それに気付けるだろう。私は私の生命のために生き、生命のために殉じた。次もそうあることを願う、お前も願ってくれ、琥鴞!」

    唯一彼から尊いもの、永続するものを受け取った友人の存在を眼前に思い描き、再会の場面をありありと思い浮かべて、地獄の最も重い罪人は笑う。その目には死して尚、生きる歓びが輝いていた。
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