剥落(トロイメライ)この世の理は「須らし」在るように在り、成るように成る。私もただその一部。
梅の花が咲いたという。見つけるのはいつも、私以外の誰かだった気がする。
「師父」と笑う声がする。
人のいのちは短い。だから面白い。わずかな時の中で様々なものを作り、つなぎ、紡いでいく。見ていて飽きず、そばで見ていたいと思った。人の子よ、強い目をした、優しく聡く、まっすぐでたくましく、人のために笑う子だった。珍しい素質など、ただその一部でしかなかったのに。
梅の実は落ちて、雨は止んだという。あなたを刺していた日差しはもう少し、柔らかかった気もする。
かつての私なら言えたでしょうか、いいえ、今でも言うことはできる。言うだけなら。あなたがそれで喜んでくれるなら。その言葉の真実の意味を私は知らないが、それでも、言えばあなたが泣いてしまうのが分かるから、口に出せないまま、あなたは美しくなっていく。
1379