【虚淮】『わからないのか』「あれは何を考えている」
「わからぬ。読めぬ」
微動だにしない冷たい顔の下でいったい何を考えているのか。こちらに悟らせようともしない。術に因る解析も不可能。その心の内を何一つ波立たせることなく、ただ静かに沈黙している。
「虚淮。何を考えている……」
「……」
行ったか。
牢の前に屯していた気配が遠ざかるのに疎ましげに息をつく。
あれから何度となく干渉を受けているが、そのいずれにも反応を返したことはない。ただ座し、在るのみだ。それ以上の何かを示すつもりはないのだといい加減理解すれば良いものを。
彼らが自分の処遇を持て余していることは知っている。
従属するのなら制限の下に解放もできよう。害意があるのなら処断もできよう。
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