ローくんの夢日記ポーラータング号は深夜の海を潜航していた。
船長室の墨色の窓から、小さな常夜灯以外の照明を落とした暗い艦内に、窓より黒い、大きな影が入って来る。
影は部屋に設えられたベッドのそばに近寄り、眠る者を覗き込む。
影には名前があった。ドンキホーテ・ロシナンテ、またはコラソン。
コラソンはここ、船長室に眠る男・ローを大切に思う故人のひとりであった。
コラソンはいわゆる亡霊であるが、盆暮れ正月、クリスマスにローの誕生日、あとなんでもない夜にふらっとローのもとに現れて、寝顔を眺め、ちょっとした幸運や失せ物なんかを置いて行く。と言ってもローはあまり物を失くさないので、翌日好物にありつけるとか、停泊する島でかわいい犬を山ほど見られるだとかの小さなラッキーを置いて、夜が明ける前に去るのが常であった。
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