いたくしてもいいから これ、と言いながらフロイドが僕の手のひらに何かを乗せた。銀色のアクセサリーのようなもの。ラウンジから帰ってきたばかりの、まだグローブをはめたままの左手で、僕はそれを摘まみ上げた。
プラチナのロングピアスだ。見覚えのあるブランドのロゴマークがチェーンに繋がれてぶら下がっている。
「落とし物ですか?」
「ちがう」
シャンデリアの明かりを受け、白銀の光がチラチラと僕の目を何度も刺す。よく見ればアルファベットのロゴにはびっしりと小さなダイヤモンドが埋め込まれていて、それがやかましく光を反射させていた。
それなりに高価なものなのだろう。一代で財を成した家の人間が喜んで身に付けていそうな、いかにもというタイプのジュエリーだ。成り上がりの金持ちは、デザインなどよりハイブランドのロゴマークに強い魅力を覚えるらしい。とてもじゃないが僕に付ける勇気はない。
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