何百、何千回目の少し早く目覚めたサンポは、寝苦しさの中で星が蹴り飛ばしたらしい毛布をお腹周りにかけ直してやってからベランダに出ていた。涼しい朝の空気にあたりながらぼんやりと日々の会話を思い返す。
(「結婚してください」)
(「やだ」)
普段のサンポと星の会話は、大体こんな感じだ。別に星はサンポを嫌っている訳でもなく、というか二人はそれこそ「お付き合い」というものを何年かしている。けれど日本の女子高生が使う可愛い~! と同じくらいの軽さでサンポが口にしてきた「結婚してください」の一言には、それこそ恋人同士でいうI love you程度の気持ちしか込められていないので、毎度毎度すげなくあしらわれてしまう。
そんな日々を繰り返すこと数年。
2587