ソソ妻入れ替わりラブコメ時系列はソと妻が結婚する直前くらい。結婚式の準備で妻ちゃんももうお城に住んでる(ソとは別室)
2人は幼い頃からの許嫁でお互いよく知ってるし仲良しだし好き合ってるけど、結婚前ってちょっとナイーブになるじゃないですか。不安だけどお城だとみんなの注目を集めてしまって全然落ち着いて話せない
そこで夜中にコッソリお城を抜け出す2人。ソの身体能力と賢さがあれば兵士の目を掻い潜るなんて余裕だよ
夜の街なんて2人とも初体験、特に妻ちゃんはいろいろ珍しくて大興奮(夜遊び禁止の箱入り娘のため)
楽しくお忍びデートして、街を抜けた先の人気のないセノーテのほとりに腰かけたくさん話した。
今までのこと、これからのこと。王としての責務。妻としての覚悟。
「だがこの夜だけはただの2人の若者でいよう、最後だからな」と言って初々しいしい口付けを交わす2人。
夜も更け、流石にそろそろ帰らないとみんなにバレるということで名残惜しいけどその日はそれでお城に帰った
次の日の朝目覚めたソ。身を起こすといきなり「おはようございますお嬢様」と言われスペキャ顔になる。下を向くと胸がある。可愛いネグリジェドレス着てる。
内心「は????」と思いながら姿見の前に立つとそこには妻ちゃんが映っていた。
どういうことだ!!身体が入れ替わってる!!!(ベタ展開)
でもソにはうっすら思い当たる節があった。昨晩語り合ったセノーテ、あの場所に精霊の気配があった。精霊の悪戯に違いない。
明後日は結婚式だというのにとてもまずいことになった。オレが妻の体に入っているということは、オレの身体には妻が…?ものすごく心配になってきたソ、だらだら冷や汗をかく
こうしてはいられないと一刻も早く妻の元に向こうことにしたソ。召使いたちを追い出し着替えようとしたところで途方に暮れる。「なんだこの服は…装飾が多すぎる!どうやって着ると…?!」
結局訝しむ召使いたちに手伝ってもらいながらなんとか着替えたソ。歩こうとしてドレスの裾踏んで転ぶ。
「殿下に会いに行く!急用ゆえ他の予定はキャンセルだ!…ですわ!」
お城に普段とは似ても似つかぬ凛とした妻ちゃんのクソデカ声が響き渡った。
みんなびっくりしたが、「あらお熱いわね〜!」って感じに受け止められた。生ぬるい視線に赤くなるソ。
ドレスの裾捲ってズカズカ歩き自室の前までやって来たソ(妻ちゃんボディ)
部屋の前の衛兵たちが「畏れながら殿下は体調が…」とか慌てて言ってきたけど「急用なのだと言っておろう!」って押し通りドアを蹴飛ばすソ
えっ…男らしい…ていうか殿下そっくり…!ってトゥンクする衛兵たち(殿下ガチ勢)
ドア開けた瞬間、室内にいた人影がビックリして飛び上がる
足を揃え、両手を胸の前に当て、上目遣いでしおらしく涙ぐむ見たこともない自らの姿に卒倒しかけるソ(妻ちゃんボディ)
オレの身体の中身はやはり妻だ…、、とひと目で確信した
衛兵たちにこんなザマを見られる前に速攻でドアを閉める
「●●(妻の名前)だな?」と小声で問い掛けると「で、殿下〜〜!」と不安な気持ちが弾けるように泣き出す妻(ソのボディ)
「朝起きましたらなぜか殿下になっておりまして…私、どうしたらいいのか…!」
ヒックヒックと肩を震わせる自らの姿に「わかったからオレの顔で泣くな…」と頭を抱えるソ
ソはこの状況がおそらくセノーテの精霊のせいであることを説明。
「精霊と対話する資格があるのは大司祭を除いては次期王たるオレだけだ。オレはすぐにあの泉に赴く。そこでオマエに頼みがある」
「はい」
妻ちゃん(ソのボディ)が涙を拭き顔を上げる。
「今日はるばる三層から◯◯侯の使者が婚儀の前祝いに訪れるのは知っているな?◯◯侯は上層の要だ。オマエはオレとして振る舞い失礼ないよう彼らをもてなしてほしい」
驚き口を両手で覆う妻(ソのボディ)
「仕草も気をつけろ、オレの顔でやると違和感しかない」居心地悪そうな顔をするソ(妻ボディ)
というわけで妻(ソボディ)は使者の接待、その間にソ(妻ボディ)はこっそり泉へ、ということになった
短い時間でなんとか定例の挨拶文句やら式典の手順などを妻ちゃんに伝え、城を抜け出すソ
妻ちゃんは頭は良いが立ち振る舞いや仕草があまりにも自分と違うのでなりきれるのか内心心配でたまらないソ
(疾く泉へ行き元の身体に戻させる、それがオレにできる最良だ)
不安を振り払い道を急ぐソ
だが走れば半刻で着くと思っていたのに、妻ちゃんの身体では歩幅が狭い上、すぐに息が上がってしまうので走ることもままならない
苦しそうに息をしながら(こんなにも脆いのか…この身体は…)と愕然とするソ
なんとか街の外れまでやってきたソ(妻ボディ)
さぁもう少しだと思った矢先、道端にたむろしていた柄の悪い男たちが前に立ちはだかってきた
「そんなに急いでどこ行くの?俺たちと一緒に遊ぼ?」
無遠慮に肩を掴もうとしてくる手をスッとかわし構わず先に進もうとするソ
だがそれが怒りを買ってしまう
「おい待てコラ!」
「……ッ」
襲いかかってくる数人をなんとかかわすソ。だが瞬間回避の意思に妻ちゃんの華奢な身体がついていかず、とうとう腕を掴まれ塀に押し付けられるように囲まれてしまう。
「離せ…!この身にオマエたちのようなモノが触れるなど許さん!!」
「生意気な女だな、顔見せろ!」
被ってたフードをとられるソ
「美人じゃん」
「しかもいい装飾品つけてんな、どっかのお嬢様か?」
「どうせ脱がせるんだしついでに全部貰っておくか」
「ぐ…ッ、こ、の……ッ」
腕を振り解こうとするがまるで岩で押さえつけられているように動かない
大袈裟ではなく子供と大人くらいの力の差がある
いつもの自分だったら片腕一本でも纏めて倒せそうな奴らに一切の反抗ができないという経験はソには衝撃的すぎた
生まれつき人並み外れて強靭だったために弱い者のことが本当に想像できていなかった
下卑た笑みを浮かべた男が無遠慮に胸を乱暴に掴む
あまりの所業に怒りが頂点を越えるソ
絶対に殺す…!!
ソがぷちっとなったその時、自分の身体がそんな大変なことになっているとは露知らず妻ちゃんは◯◯侯使者の接待をなんとか頑張っていた。普段のソの姿を頭に思い描きながら(あの人だったらこう答えるはず…)という受け答えをし、ボロが出ないように必死。臣下たちは「なんか今日の
殿下すごい愛想がいいな…!」と思ってる。(持ち前の優しさがどうしても出る)
そして式典も終りに近づき締めの挨拶をしようとした時、急に世界がぐるっと回転したように脳が揺れて、気付いたら柄の悪い男たちに囲まれて胸を鷲掴みにされてた妻ちゃん。わけもわからず「きゃあぁあー!?!?」と叫ぶ
逆にソの方は脳味噌ぐるんの感覚の後、急に式典の壇上に立ってみんなの注目を浴びてる。一瞬「は?」と思ったが瞬時に状況を理解し壇上から飛び降りた。
「申し訳ないが説明は後だ!」
ぽかんとする一堂を尻目に煌びやかな式典服のまま窓から飛び出し、身を捻って城壁に着地するソ。
(どこだ!!)
街を見下ろしながら泉の方向を探すソ。その時彼の耳にかすかに「きゃぁあーー!!」という女の悲鳴が届いた。聞き間違えるはずもない。妻の声だ。
「でかした!!」
ニッと口角を上げたソの、精緻に刻まれた脚の刺青が光り出す。生ぬるい風が吹き、長い髪をゆっくりと揺らす。
それは彼が戦闘で使い慣れた魔術式。極小に圧縮した空間の力を強化した脚部に伝え、一定のベクトルへ一気に射出し彼方への跳躍を可能とする。
「殿下!?どこへ行かれるのです!!」
慌てて窓に駆け寄った臣下たちの目が主人の姿の代わりに捉えたのは、青い稲妻の軌跡と、衝撃に大きく抉れた城壁だった
「なっ、なんですかあなたたちは!離してっ…いや…!」
「あれ〜?さっきまでの強気な態度はどうしたの?」
「怖くなっちゃったのかな〜?」
急に弱々しく涙を浮かべて悲鳴をあげ出した妻ちゃんに、男たちが下卑た笑顔を向ける。
「優しくしてあげるからさ」
胸元の衣服を裂こうと男の手に力が入る
服が破ける音がして息を呑む妻ちゃん。
(殿下…!)
心の中で彼を呼び目を閉じる刹那、彼女は暗い空に奔る青い閃光を頭上に見た。一瞬遅れて強い風が吹き荒れ、地面が揺れる。
風に暴れる髪の狭間から見えたのは、今まさに心の中で求めたその人。よく知っている彼が見たこともない顔をして立っていた
「ヒッ……」
男達が怯えた声を上げる。
この国に住む者ならばその姿を知らないはずはない。豪奢な式典服も、美しく輝く青い宝石の頭飾りも、たった1人にしか許されていないものである。
「……悪いが」
低く地を這うような声は氷のように冷たい。
「オマエたちの申し開きを、聞いてやる気はない」
強い風がもう一度吹き、妻ちゃんが目を開けた時にはもう全てが終わっていた。男たちは纏めて地面に伸び、ソの刺青の輝きがふっと消える。振り向いた彼はもういつもの顔だった。
「殿…下……」
「大事ないか」
彼は歩み寄りながら彼女の服の胸元が少し破れていることに気がつく。
彼の視線に気付いた妻ちゃん、慌てて胸元を隠す。
「あっ…ごめんなさい…!こんな、はしたない…」
「……」
ソは黙って式典服を脱ぎ、妻ちゃんに頭から被せた。身体に合わないぶかぶかの布の隙間から妻ちゃんが慌てた様子で顔を出す。
「い、いけません…この服は、殿下しかお召できない特別な…!」
「そんなことはどうだっていい」
ソは眉間に皺を寄せ妻ちゃんをひょいっと抱き上げた。
「…謝るのはオレの方だ。オマエの身体を危険に晒した。オレは知らなかった。オマエがこんなに脆く柔らかいと。オレとは何もかも…違っていた」
目を閉じたソはそのまま顔を妻ちゃんの胸元に沈めて黙ってしまった
誰よりも逞しく頼りになる彼が、まるで母に甘える幼い子供のようにも見え、妻ちゃんは思わずふっと柔らかく微笑んだ。
ソがそのまま顔を少し横に向け上目遣いに妻ちゃんを見る。
「オレは学んだ。もうオマエを1人にはしない。それから街の治安を高めねば。王都がこのザマではどうしようもない」
遠くから、城から駆けつけた臣下たちの声が聞こえる。ソは3人組の拘束と収監を命じ、恥ずかしがる妻ちゃんを抱えたまま歩き出した。
「あの、殿下。そういえば◯◯侯様の式典は…」
「城にあのまま置いてきたな」
「いっ、いけません!私はもう大丈夫ですので疾くお戻りを!」
「ではこのまま走るか」
騒ぎに気づいて集まってきた街の人々が見送る中、ソは妻ちゃんを抱えたまま城まで走って帰った。
結婚式当日、この城下町の土産物店では、この時の様子を絵にした旗が急遽製造され売れに売れたとか。しばらく王都の名物品になったのは言うまでもない。
ちなみにソは後日例の泉へ行き、精霊になぜこんなことをしたのか聞いてきた。精霊と完全に意思疎通できるわけではないが、どうやら今回の入れ替わりは「精霊からのプレゼント」だったらしい。曰く、「あなたたちはお互いをよく知りたいと思っていたでしょ?だから結婚前に入れ替わらせてあげたの」
「精霊というものは全く厄介だな」
城に帰ったソは妻ちゃんに精霊のことを話し終り大きくため息をついた。だが肩をすくめて微笑む彼女の顔を見て何か思いついたようだった。
「入れ替わりはもう御免だが心残りが一つある」
「なんでしょう?」
「オマエだ」
首を傾げる妻ちゃんにソの指が向けられる
「オマエの身体は貧弱すぎる。どうせなら元の体に戻る前に鍛えてやるんだった」
「もう…そんなに弱くはありません!体力は人並みだと自負しております!」
「む、そうか?」
ギシ、とソの動きに合わせてベッドが軋む。ゆっくりと押し倒された妻ちゃんの上に彼の長い髪の毛がサラサラとかかった
「では早々に音を上げてくれるなよ?オレとてどこまで自制できるかわからん」
「そ、それとこれとは話が別ですっ…!」
結婚式を無事に終えた今夜が彼らの初夜だった。薄灯りの中、天蓋に仕切られた広いベッドの上で若い2人が向かい合う。
顔を真っ赤にした妻ちゃんが、いよいよなのかと身を固くする
その様子があまりにも可愛らしいのでソはふっと微笑んだが、彼が長い髪を耳に掛けると空気が変わった。艶かしく舌なめずりしてみせたその顔は悪戯っ子のようにやんちゃだった。
花びらを散らした褥に甘い香りが漂う。明かりが消されると、睦み合う人影は闇の中に溶けて見えなくなった。
おしまい!!