せきとます「関口さんもまだまだですねえ、詰めが甘い。煎じて飲んでも薬にゃならんです。つめだけに」
「馬鹿云ってないで探すんだろう爪切り。ここの物なら榎さんの物なんだろう」
「ちょおっと借りただけなんすけどねえ。どこいっちゃったかなあ。参ったな」
「勝手に参ってくれ。大体、僕は失せ物探しに来たんじゃあない。頼みにきたんだよ」
「そいつは判ってますけどね、何せ失せ物探しは僕の専売特許。売りですから。ええ。しかしね、ちょっとくらい手伝ってくださいよう。昔の好で」
「これを好と云うなら今すぐ断ち切りたいよ」
「ひどい!ひどいなあ。特に関口さんと青木さんは心にもないことを遠慮なく云うんだから」
「純粋に心から発した言葉だよ」
「ま!いつになく歯切れが良いじゃないすか」
「いいから、その専売特許とやらで早く見つければ良いだろう」
「ちょおっとエンジンがかからんだけです。何せ御大の物を僕が無くしたとなりゃあ、僕の進退に関わりますから」
「クビだクビだと云われていて、今更、進退もないだろうよ。諦めて切られるんだな」
「切るのは爪だけで良いですう」