十二、首筋(執着) それは触ってはいけないものだった。彼を彼たらしめている部分であり。長い金髪から覗くそれは、ときに美しくときに愛らしい。でもそれは小竜の完全な所有物で。触れることはおろか見ることすら彼の許可がいる。もっとも出し惜しみをしているわけじゃないから、言えば気さくに見せてくれる。それでも、小竜の竜は彼の髪よりも触れるのが難しい。
その日は季節外れの暑さで、二人は浴衣姿で縁側で夕涼みをしていた。空のてっぺんが黒くなるころ、ようやく風がひやりと通り抜けるようになっていく。
「暑かったねえ」
小竜は団扇でゆっくりと自分を扇ぐ。
「まったくだ。倒れるかと思った」
大包平は小竜の方へ身体を倒して、小竜の膝に頭を預けた。今日の大包平は畑当番に始まり、馬小屋の修繕の手伝いやら、外での力仕事ばかりをしていた。
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