君かげ香る さてどうしたものか。
俺は日捲りカレンダーを睨んだまま腕を組んだ。恋仲である義勇の誕辰まであと一日、時間がない。残命を共にすると誓い合って初めて迎える彼の記念日、式を執り行った訳でもなく心で伴侶となったものだから、せめて何か証となるものが欲しいとは考えていた。最近流行りの結婚指輪なども視野に入れて想像してみたが、あれは常に身に着けるものだと聞く。義勇は片腕なので当然日常でも左腕を酷使することが多く、喜んでくれるだろうが聊か作業に不便が生じないかと懸念が湧いた。義勇のことだから傷つけないよう、かえって気を遣うかもしれない。俺自身、身に着けるものに締め付けや異物があると気になってしまう性質なので、伴侶共に身に着けなければならないという契約の拘束輪は少々窮屈さを感じてしまった。
5514