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    ako_ryusen

    使いこなせる自信はない。なぜなら上げるものがないから!

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    ako_ryusen

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    当時ではないけど何年も前に書いた高3秋、レオと泉の再会のレオいず

    再会月永レオが復学した。
    それは本当に唐突で、なんの前触れもなかった。
    本人もケロッとしたもので、今まで休んでいたのが嘘のような振る舞いだった。
    Knightsの空席だった王座に王が帰還した。
    それはKnightsが無限の武器を取り戻した瞬間でもあり、そしてまた仕える王の帰還に皆喜んだ。
    これでまたKnightsはうまくいく。
    前のように戻るのだと、心を弾ませた。
    ジャッジメントの開催が決まるまでは。



    「あー、楽しかった」
    レオはナイトキラーズの衣装から制服に着替え、真っ暗な夜道を歩いていた。
    「それはよかったねぇ。こっちはあんたに振り回されて散々だったんだけどぉ」
    隣を歩く泉も制服姿で、片手に鞄を抱えている。
    大げさに文句を言う泉にレオが笑う。
    「わはは! いいリハビリになったろ? Knightsが不抜けてたのは事実だ。皆おれの騎士なんだからこれくらい出来て当たり前」
    「まぁ、それはそうかもしれないけど……もっとやり方があるでしょぉ」
    心配した。
    そんな言葉が泉の口から紡がれることはなかった。
    ジャッジメントを開催すると言ったレオの本心がわからなくて不安だった。
    レオのことをわかった振りで三人の前では振る舞っていたが、レオの気持ちを汲みきれなくて、正面からぶつかることしか出来なかった。
    結果、司がレオを繋ぎ止めることになったのだが、自分のふがいなさに吐き気がする。
    「セナとこうやって帰るの、久しぶりだな」
    レオがやたら明るく言った。
    こうやってふたり並んで帰るのは、二年の夏、ちょうど一年前くらいまでだった気がする。
    あの頃はふたりとも何も知らない愚か者だった。
    レオもこんな人を試すようなことはしなかったし、無償の愛を振りまいていた。
    その後とんでもないしっぺ返しを食らうことになるのだが、楽しかったな、と泉は思う。
    大好きなレオの曲を聞いて、歌って、踊って、それだけで楽しかったし嬉しかった。
    でもそれももう過去のことで、本来なら自分たちはこうやって並んで歩くことはないのだ。
    先ほどからずっと違和感がしている。
    落ち着かないな、と一つ溜息を吐いた。
    レオはどう思っているのだろう。
    そう思って視線を投げると、ひとつに結った髪をぴょこぴょこさせながら星を見上げていた。
    空を見上げれば月が細いせいで星がよく見える。
    うだるような暑さは過ぎ去ったが真冬の澄んだ空気にはまだまだ遠い。
    それでも輝いている星を見て、レオは鼻歌を歌っていた。
    「そうだねぇ」
    それ以外言葉が出てこなかった。
    どういうつもりでレオが自分と一緒に帰っているのか、聞くことが出来なくて黙り込む。
    遠くから波の音がした。
    この空間は本当に居心地が悪い。
    喉に詰まった言葉が多すぎて辟易とする。
    でもそれが、元々の自分たちの関係でもあるのだ。
    あのとき、レオの話を聞いていれば。
    自分の気持ちを言葉にしていれば何か違ったかもしれない。
    でもそれは「たられば」の話で、時は戻ってこない。
    すっと一緒にいてあれだったのに、半年も離れていればお互いの距離も遠くなる。
    それなのに何で泉はレオと一緒に帰っているのか。
    レオを殺した自分にはその資格はない。
    けして許されないことをしたのだ。
    それなのになぜ。
    またその疑問に行き着いて、泉は考えるのをやめた。
    「王さま、先に帰ってよ」
    「ん?」
    「家に帰る気分でもないから寄り道。あんたは付き合わなくていいから」
    泉はふらふらと前を歩いているレオを追い越すように歩くスピードを上げた。
    振り向かずに片手をあげてひらひらとさせる。
    「ばいばいね」
    「待って!」
    突然レオが大きな声を上げて泉の手を取った。
    驚いて泉が振り返ると、どこか必死に見えるレオと目が合う。
    「な、なに?」
    「どこか、いくとこ決まってるのか?」
    出だしの音は強いのに、語尾に行くほど勢いをなくすレオの言葉に泉が瞬く。
    そしてあっけにとられたまま素直に答えてしまった。
    「いや、決まってはないけど……」
    「じゃあっ」
    レオが歯切れ悪く言い淀む。
    泉は眉間にしわを寄せ、不機嫌そうに言った。
    「なに?」
    離してくれ、と手を揺すったが、レオが逃がさないというように力を込める。
    そして泉を見つめたまま切羽詰まったような声を出した。
    「……うちに……うちに来ないか?」
    また遠くで波の音がする。
    レオの真剣な瞳に、泉は誘いを断ることは出来なかった



    訪れたレオの部屋は見慣れたままだった。
    ベッドも、パソコンも場所は変わっていない。
    何かにつけてお互いの家を行き来するほどくっついていたときも、泉がレオを殺した後もその場にあった。
    床に散らばる五線紙を拾い上げる。
    そこには少し癖のあるオタマジャクシが並んでいて、泉はほっと息を逃がした。
    真っ暗な部屋で蹲るようにして喘いでいたレオはもういない。
    苦しみに呼吸さえ乱し、握れない手にペンをくくりつけ、何枚も何枚も五線紙を無駄にした。
    あのとき拾った五線紙は、皺だらけで、音符は数えるほどしかなく、黒くインクで塗りつぶされていた。
    (三毛縞と海外に行ってたんだっけ……)
    人づてに聞いた話を思い出し、泉は溜息をついた。
    拾い集めた五線紙を順番通りに整えてゆく。
    三毛縞斑はレオの親友だ。
    仲間とも、友達ともいえない、何の名前も持たない関係の泉とは違う。
    死んでいるレオに寄り添い、力になって、見事に息を吹き返させた。
    その間自分は何をしていただろう。
    見つかるはずのないレオの影を追いかけて、この街を彷徨っていた。
    街にはおろか、国内にすらいなかったレオの影を追っていたのだ。
    溜息くらい出る。
    五線紙はすべてまとめると三曲に分かれていた。
    勝手にレオの机の引き出しを開け、クリップを拝借する。
    それぞれが混じらないように留めてデスクの端に置くと、部屋の扉が開いた。
    「セナ、お待たせ。水持ってきた」
    大きなペットボトルと、ふたつのグラスを片手ずつに持ったレオが飛び込んでくる。
    どこか慌てたようなそぶりに泉は大きく瞬いた。
    「ありがと。おばさんたちは? 挨拶しないと」
    「今日はおれだけ。ふたりとも町内会の慰安旅行だって。ルカたんは先輩のところらしい。平気かな、ルカたん。お泊まりなんて片手で数えるくらいしかしたことないし、寂しくておれを呼んで泣いてるかも!」
    「じゃあルカちゃんところ行けば?」
    泉は溜息と共に自分の鞄を拾い上げる。
    なんとなく来てしまったけれど、この部屋はレオとの思い出が、良いものも悪いものも多くて息苦しかった。
    「ちょっ、ちょっとまって、来たばっかじゃん。帰んないで、お願い、セナ」
    ペットボトルとコップを先ほど泉が置いた五線紙の横に置き、レオが泉の手を取る。
    レオが母親に置いて行かれる子供のような目で泉を見るものだから、わけがわからなくてイラッとした。
    「そんなこと言ってもさぁ、俺に何の用があるの? ついてきてなんだけど、明日の学校じゃだめだったわけぇ?」
    先ほどと同じように振りほどこうと手を引くが、ぎゅっとされていて離れなかった。
    「だめ」
    短く答えたレオが泉の手を引く。
    部屋の奥に誘うようにするのに泉は溜息をつき、鞄と下ろした。
    「なぁに?」
    鞄の横の絨毯の上に泉が腰を下ろすと、レオはようやくその手の戒めをほどく。
    そうして泉の前に、少し距離をとってあぐらをかいた。
    「セナと、話がしたい」
    思いがけないレオの言葉に泉の瞳が揺れる。
    レオはさっきまでKnightsを解散するだの、自分が消えるだの言って正面切って戦った相手だ。
    その争いもようやく幕を下ろし、元の日常が戻ってくる。
    そんなときに何を話すのか、全くわからない。
    「……話すことなんてないでしょぉ」
    まさか過去のことを蒸し返すわけではあるまい。
    でも、レオが泉のことを糾弾して、罵倒して、罵ってくれるならそれはそれでいいような気がした。
    許されるわけではないけれど、泉にはそれくらいの罰は必要だ。
    立てた両膝を抱えるようにして頬を預け、そっぽを向いてレオの反応を待つ。
    すると自分で言ったレオも言葉を探しているのか、部屋に変な沈黙が流れた。
    「えっと……」
    しどろもどろになるレオに、ぎゅっと掴まれたような心臓が痛い。
    切り捨てるなら早くしてほしい。
    泉は断罪を受けるべく唇をきつく結んだ
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