ム三のような何か「武藤さんはどんな女が好きなんですか」
武藤は三途の唐突さには慣れている。だからこれは彼にしては軽い挨拶程度だなと武藤は思った。参考資料のつもりなのか、三途は雑誌を見せてきた。いわゆるアイドルグラビアである。武藤からするとどれも同じ女に見えるのだが、違う女だと言うから驚きだ。
「これっすか」
そのうち一冊を三途が指さした。注視したつもりはなかったが、そんな風に見えたのだろうか。まぁ、それでいいかと武藤は頷いた。
三途はゆっくりと口を開いた。
「隊長はオレが好きですね」
「……どうしてそうなる」
「この女、髪が長いじゃないですか」
なるほど三途が指さした女はロングヘアだった。
「顔立ちもなんとなく俺に似ているし」
「……そうか?」
雑誌と三途を見比べる。
「おまえのほうが美人だろ」
三途が黙った。顔のほとんどをマスクで覆っているので表情がわかりにくいが、武藤はあえて表情を読むようなことはしない。気を悪くしたなら文句を言えばいいし、言わないということは納得したということだろう。
「隊長はオレがすきですね」
武藤は三途の唐突さには慣れているし、否定することでもない。
「そうかもな」
「……隊長はそのうちオレに刺されますよ」
「気を付ける」
グラビアの女はちっとも三途に似ていなかった。