途中の話④ 体育館に行くと、ダムダムとボールをつく音が聞こえてくる。先客がいるとわかった宮城だが、大方誰なのかは予想がついていた。
中に入ると、葵が制服のままで一人練習をしていた。彼女はいつも昼休みに練習をしていた。宮城がふと思い立って体育館に訪れると、いつもいる。いない日がないんじゃないかと思うくらいに。
葵は宮城には気が付いているようだが、特に反応することなく練習を続けた。そういう気を遣わなくて済むところが宮城にとってはありがたかった。宮城はボールを出してきて、シャツの袖をまくった。ドリブルをするとざわめく心も落ち着いてくる。開けている扉から心地よい風が吹いてきて、心が洗われる気分だった。
フリースローの位置に立って、ボールを数回つき、僅かに緊張した気持ちでシュートを放つ。ガン、とリングに弾かれたそれは、あらぬ方向へと転がっていった。
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