残照 昼前から激しさを増した戦闘の勝敗が定まり、砦のすべての門が開かれたのは、川向こうの森に傾いた陽の端がかかるころであった。
残党狩りの指揮をトルグリムとアトリに命じ、アシェラッドは物見櫓にかかる梯子を昇る。背後には、ビョルンが影のように付き従っていた。いつもなら、残党狩りも金目のものの探索もビョルンに任せるのだが、なんとなく今日はそうしなかった。その理由はおぼろげに判っているが、あえてそこには焦点を絞らず、梯子を昇りきる。弓に当たって死んだ守備兵の死体を下に落とし、梯子を昇ってきたビョルンの手を取って、引き上げた。
物見櫓の上は、さすがに眺望がきいた。砦の搦手門のあたりで残党が最後の抵抗をみせているらしく、アトリが指示を飛ばす声が聞こえる。
2028