Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍫 🍮 🍓 ☀
    POIPOI 1183

    秘みつ。

    ☆quiet follow

    凪茨▼茨が妊娠する03、男性妊娠
    不定期連載まとめhttp://hi.mi210.com/text

    ##凪茨
    ##全年齢

    茨が妊娠する話03

     ***

     めちゃくちゃ下腹部が痛い。
     なんでも男性妊娠、会陰部分になんと、産道が走り膣とヴァギナが形成される。両性具有になるらしい。それは一過性のもので、出産して五年くらい経つと消滅する。あまり理解したくない。
     この痛みが正常か異常かわからなくて、パンツに血がついた時なんか婦人科に駆け込んだ。婦人じゃないけど。お腹のエコーを見て、心音を聞いて、大丈夫ですよ、と云われてほっとする。
     今日も痛みの緩和剤と吐き気止めの漢方を処方してもらい、家に着いたらもう真っ暗だった。ねむい、つらい、気持ち悪い。でも閣下にご飯作らないと。今日は寒いからシチューをつくろう。野菜切って煮るだけだし。エプロンをつけて野菜を切り、鍋に入れるところで閣下が帰ってきた。
    「ただいま、茨。料理私がやるから茨は寝ていて」
    「でも煮るだけです」
    「立ってるの辛いでしょう? 無理したら駄目だよ。休める時に休んで」
    「はい……」
     ふらふらとベッドに戻った。
     閣下だって疲れているのに申し訳ないな、俺何にもしてないな、なにしたっけ、寝て、起きて、吐いて、食べて、寝て、病院行って、寝て……何もしてない。
    「し、仕事、しないと……」
     そうだった。今日チェックする書類があったんだった。
     端末を取り出し、精査をして、サインする。たったそれだけなのに指が重い。くらやみのなか端末の光がぼんやりひかる。俺がうんうん唸っていると、「こら」と閣下がドアーに立っていた。
    「休まなきゃ駄目ってさっき云った」
    「、でも」
    「仕事でしょう? 休みにしたんじゃないの?」
    「休みまでの手続きがあるんです」
    「社長業は副社長に、副所長は代理を立てて、全部任せる。Edenのプロデュース業はもう後任決めたよね。茨だから自分が抜けても回るようにはしてあるでしょう」
    「それは緊急時で」
    「いまが緊急時」
    「書類を作成しないといけなくて」
    「作ってあげるからおいで」
     閣下は俺のラップトップを机に置いた。横に座って認証を解除すると、テンプレを引っ張ってきて俺が箇条で云うことを音声入力かよってくらいで打ち込んでいった。完成した書類に電子サインして各秘書に送る。これで全ての就業が休業になった。ほんとに。
    「ありがとう、ございます」
    「うん。茨は寝ていてね、いい子だから」
    「……うう」
     火を止めに閣下がキッチンへ向かう。
     俺は暗いベッドに残された。
    「……ほんとに俺、なんにもしてない……」
     シーツに顔が埋まって、胸の奥の重たいものが沈んでいく。一つも達成してない。家事も、仕事も、生活も。そう思うと目の奥が熱くなって、ぽろぽろと涙が溢れてきた。
    「うわーん」
    「どうしたの茨」
     閣下が飛んできて、部屋の電気をピッとつける。
    「どこか痛い?」
    「おれ、おれ、なにも、してない……っ」
    「え?」
    「おれ、ダメ、なんだぁ……っ、無能だよぉ……っ」
     ひっひっとうまく呼吸ができない。
     閣下が涙を拭いてくれて、抱きしめてくれる。閣下は優しい。なんでもできる。できることを許されている。
    「こんなポンコツな俺なんか死んだほうがいいんだ、産業廃棄物は処理場で埋められればいいんだ、う、うわーん!」
     情緒がぶっこわれる。こんな馬鹿みたいにこえをあげて泣いたことなんてない。馬鹿みたいだし。でもいま馬鹿なんだ、なんにも考えらんない。
    「茨、茨はダメじゃないし、無能じゃないよ。茨はいま茨にしか出来ないことしてる。赤ちゃん育ててる。それは誰にも出来ない」
    「でも、そんなの、なんにもしてない……」
    「してるよ。つわりに耐えて、吐いても食べて、寝て血を作ってる。茨が生きてるから育てられるんだよ。それはどんな仕事よりも価値があることだと私は思うな。茨はなんにもしていないのに、一ミクロンずつでも、赤ちゃんは育ってるんだ、それは茨の力なんだから、誇っていいんだよ。私にはできない、だから他のできる仕事をするんだ」
    「う……ぐす……」
    「茨はなんでもしてたから。今の状態が苦しいんだね。でも今の茨の仕事はなんにもしない、だよ。寝て、起きて、食べて、寝て、でいいんだよ。楽にならないと。つわりで辛いんだから。楽していいんだよ」
     閣下は背中を撫でながら優しく云った。
    「料理も……最後まで作りたかったのかな。横から私が盗っちゃったから……ごめんね。気を使いすぎたね。私たち、初めての仕事をしてる。これからまた分からないこととか、喧嘩とか、あるかもしれないね。だから、茨はその度にこうやって泣いていいんだよ」
    「……それは恥ずかしいのでやりません……」
    「私は嬉しかったな。茨、泣いてるところ絶対に見せてくれないんだもの」
    「情緒不安定なんです……妊婦なので……」
    「ふふ」
     二人してわらった。
    「じゃあご飯にしよう」
    「食べられるかわかりませんが」
    「食べられなかったら他の何か食べればいいから、座って」
     皿にシチューが小さく盛られて、湯気がたつ。外はすっかり夜で、星空が綺麗だった。

    続く

    (210214)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭🍼🍼🍼🍼🍼💒💒🍼😭😭💖🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼😭😭😭😭❤❤❤🙏❤❤❤💖💖😭😭👏👏👏😭🙏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works