新刊のサンプル(side/グレイ)
サブスタンスというものはまだまだ解明されきっていない物体だ。
水や電気を発生させたり、時には人間の行動を操るような危険な能力を持ったものもある。そのとんでもない力は人類を驚かせる事象を起こし、想像もしないような出来事を引き寄せてしまう。……今、この瞬間のように。
周囲を包む、眩い光から庇った目を開く。その起点にはチームの中で最も捕獲能力の高いヒーローが、淡く輝く糸でサブスタンスを捕らえているはずだった。
サブスタンスが光った瞬間呼んだ彼の名前。その形のまま固まった口から、もう一度同じ名前を呼ぶ。
「ビリー、くん……?」
警戒を促す声ではなく、探るような声。背を向けている柔らかなオレンジは見慣れたものなのに、その下に纏う服はヒーロースーツではない。白シャツに濃いグレーのスラックスを合わせた服装はスーツのようにも見えるけど、スーツにしてはスラックスのチェック柄が派手なような気がする。あまり見覚えのないファッションだ。
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