ゲ謎 水木! 水木! 久々というほどではないがそれでも友との再会に心が弾んだ。あまりにも嬉しくてつい水木の体を持ち上げるほど。妻も蛙の目玉を出すぐらいに歓喜していた。だが、友の反応は違った。
怯えた表情を浮かべ、走り去っていく背広の男。みずき。背広の男の名を呼んだが男の足は止まらず、姿が小さくなっていく。枝垂れ柳のところで自分は足を止めた。これ以上進めば、人の往来がある通りに出てしまう。人間に見つかる恐れがある。この、今の姿で見つかれば厄介なことが起こる。身重の妻をなんとかあの廃寺まで運んだ徒労が、なくなる。名残惜しい思いで目を凝らす。遠く消えていく背広の男の背中を見詰め、踵を返そうとしたその時。大きな何か踏んでしまい、上半身がぐわっと前へ傾き、地面に顔面から落ちた。
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