ゆめ忘るるなかれ「……ピー、イヌピー、大丈夫か」
肩を揺すられ、乾は目を開けた。
冷房の効いている寝室で寝ていたはずなのに、首も額も汗でべたついている。
不快感より先に、心配そうにこちらを覗き込んでいる九井と目が合った安堵で乾は息を吐いた。
そのまま手を伸ばし、幼い子供のように抱きつく。
「良かった……ココだ……」
目の前にいるのは、関卍や乾赤音ではなく乾青宗を選んでくれた幼馴染。
そしてこのマンションは、D&Dからは少し離れているけれどセキュリティのしっかりした冷暖房完備の九井の部屋。
大丈夫。此処は自分と九井の二人しかいない。
「……怖い夢でも見たか?」
小さく頷く。
茶化されるかと思ったが、優しく抱き締め返された。
「悪夢って人に話したら正夢にならないって言うぜ。すぐには寝付けないだろうし、話してみろよ」
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