心頼 テルムは大きな街だった。高台に位置する城から外を見下ろしても、視界よりもずっと先まで街が続いている。王城を中心に幾重にも渦を巻くように家々が並ぶ。内側に近いほど階級が高く裕福で、貧民は最も外側に追いやられ身を寄せ合うようにして暮らしている。
グリューゲルにある生家の窓から見た景色とはあまりにも違う。いつの日かこの街を出てどこか別の場所に住むことになるかもしれない、という少女の頃の夢想よりも遥かに遠い場所にレスリーはいた。
歯車が動き出したのはヤーデで再会した時からか。それともグリューゲルで初めて彼に面と向かって意見した時からか。いずれにしろ、彼女の時間は彼と共に刻まれてきた。そして、これからもきっとそうなのだと思っていた。
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