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    ねずみ

    腐とかじゃなくても落書きでも1枚でも載せるオタクの絵ブン投げ部屋。

    パロディとか特殊設定とか女体化が多い

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    ねずみ

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    文が投稿できる。そう、Safariからならね。

    まったく読み返してないので変な所あっても見逃してください。捏造部分もあります。
    キクタさんがオガタとユーサク殿は仲がいいって言ってたの、多分宇佐美以外はそう思ってたんだろうな~と思ったのでそういう話です。その上で全く恋愛要素がないタイプの尾月です。

    山猫に懐かれる「やあ、月島伍長。尾形上等兵を見かけなかったかい?」
    「花沢少尉殿。」

    帽子を目深に被って目元が見えにくいのに、眩しいほどの笑顔の青年に声をかけられ、その伍長…月島基が振り返る。

    「申し訳ありません。随分前に別作業で別れまして。奴が何処にいるかは存じません。」
    「そうか。呼び止めてしまって悪かったね。」
    「いえ。ところで菊田軍曹殿が少尉殿を探しておられましたが。」
    「菊田軍曹が?」

    菊田と花沢は士官学校の頃の仲だというのは、菊田を知る人間ならば全員推測できた。何しろよい教え手として慕う生徒は数多くいて、花沢勇作の年齢を考えれば学生時代での菊田との繋がりは容易にできるからだ。
    それに花沢自身も、菊田を慕う士官学校出身の少尉であることを隠してはいなかった。

    「ええ。もしお時間が空いているのならば、そちらを優先された方が宜しいかと。」
    「そうするよ。伝えてくれてありがとう。」
    「…いえ。」

    そうしてその場を去ろうとした花沢はハッとした表情をして月島に振り返る。

    「尾形上等兵を見かけたら、よかったら明日の午後に団子を食べに行こうと伝えておいてくれないか?」
    「…本当に仲がよろしいのですね。承知しました。」

    尾形上等兵と花沢少尉の仲は兵営でもかなり有名だった。
    互いの立場や腹違いの兄弟だというのを全く意に返さない、仲の良い兄弟。誰彼構わず憎まれ口ばかりの尾形百之助も、人のできた弟の前ではその口が嘘のように閉じて雑談に興じていると。
    「兄様」と慕う弟を「人目がありますから」と窘める兄の姿はたとえ山猫の子であろうと人間らしい部分があるのだなと思ったよ、と喫煙所で誰かが面白半分に話していた。
    月島自身もその戯れを見かけたことがあった。

    「なんなら月島伍長も来ればいい。同じ内務班であれば顔もあわせやすいだろうし。」

    月島は愛想笑いを浮かべ、お気遣いありがとうございますと会釈した。
    鶴見の例の計画の事で、内情を知らされている者は班を数人ずつで固められていて、たまたまそれが月島と尾形だったと言うだけだ。
    一緒にお団子を食べる様な仲ではない。



    「花沢少尉から、明日の午後共に団子を食べに行こうと言伝だ。」
    「はあ。」
    「確かに伝えたからな。俺も誘われたが急な用が入ったと言っといてくれ。」

    更々行くつもりなどなく、月島は尾形に伝言を伝えるなり早々に固い布団に入り、尾形に背を向ける。

    「行かないのですか?伍長殿は」
    「行くか。」
    「何故?」

    妙に食い下がってきた尾形に違和感を感じ、月島は肩越しに顔だけ振り向いた

    「何故…って。仲睦まじい兄弟の間に入っていく気などあるものか。気を使ってるんだよ、分かれ。」
    「花沢少尉に気を遣われているという事ですか?」
    「なんだ、言いたいことがあるのならはっきり言え。」

    まどろっこしさを感じた月島がイラつきを隠さずに掛け布団を押しのけながら身体を起こした。
    尾形はいつもと同じ、何を考えているのか分からないような無表情だったが珍しくどこか迷ってる様な目をしているのに気が付いて月島は上官に向かって馬鹿にするような態度をとるなよと責め立ててやろうという気持ちを引っ込めてしまった。

    「前、貴方は"指導"を受ける俺を助けてくださいましたよね。鶴見少尉殿がお前を呼んでいたと言って。」

    なんの事だ、としばらく考えたが尾形の二言目でピンと来た。
    尾形は確かにほかの兵よりも多めの指導が必要な男であることは確かだったが、その時見かけたのは明らかに過剰なものだった。
    わざと足音を起て、近くの扉から入り「尾形上等兵はいるか」と声をかけた。

    『鶴見少尉がお呼びだ。今すぐに向かえ。』
    『…はい。』
    『貴様らも教育熱心なのはいいがあまり過剰にやるなよ。』

    面倒な事には任務でない限りは首を突っ込まないようにしているが、優秀な兵士の武器…目を潰されそうな勢いだったのと、見るに堪えない物だったので流石に助け舟を出してやっただけだ。
    鶴見には尾形の様子は報告しているので殴られ体質なのを知っているし、そもそもこの有様を見れば聡いあの男ならば自分の意図を汲み取ってくれるだろうと月島は踏んだのだった。

    「鶴見少尉の所に行って、『月島伍長に感謝しろ』とだけ言われ、帰されたときに悟りまし
    た。」
    「…。」

    あの人は余計な事を、と小さくため息をついた。

    「それが何だ。」
    「こんなことを言えるのは俺を助けてくれた貴方だけです。俺は、花沢勇作殿が、心底苦手なのですよ。」

    突然の暴露に月島は目を見開いて、尾形から目線を外して、布団のシワを辿った。
    そして今度は大きな大きなため息を吐き出す。

    「だが…二人でいつも談笑してるだろう」
    「勇作殿が喋り続けているだけです。」

    膝を立てて、肘を置くとその手を額に当てた。
    さながら月島は頭を抱えていたのだ。

    「花沢少尉は…お前を兄様と。それに彼といる時のお前は穏やかだ」
    「穏やか?何を言ってもあの人には無駄ですからもはや何も言っていないだけですよ。それに呼び方だって俺は何度もやめろと言ってる」

    尾形の少尉に対する無礼を聞き逃して、ここで月島の脳裏に言葉が浮かんだ
    ああ…これは、面倒なヤツに優しくしてしまったなと。
    何度目かのため息を短く付いて、月島は眉間に皺を寄せた顔を尾形に向けた。

    「それで?俺にどうしろと。」
    「勇作殿からの言伝は伝えなくていい…と思いましたが、それですと後々問題がありそうですから。貴方の伝言のときに、俺が行くときは貴方も同行してください。」

    月島は下官と上官の間柄を取り持つ立場にゆくゆくはなる必要があった。花沢少尉は誰から見ても人のいい男であったので、月島が伝言を伝えないなんて事があっても月島に過剰な処罰を与えるということは無いだろうが、それはそれで月島自身に問題が生じる。
    あらゆる上官にはコネがあった方がいい。人付き合いが得意という訳でもないが、蟠りはないに越したことはない。彼らが関わる計画は、そういった事も大事なのだよと首謀者の語る顔が脳裏に蘇る。

    まあ、兄弟の横で食い物を奢られるだけだ。

    そう思った月島は、承諾する他無かった。


    「あ…兄様!来てくださったのですね!」
    「ええ…伍長殿も是非と仰ったので。」
    「月島伍長を慕っているのですね。人づてにすると兄様はいつも来てくださらないのに…月島伍長、次も是非尾形上等兵と一緒に来てくれ!」

    戻ったら鉄拳制裁を食らわしてやろうと決断した月島だった。
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