夏休み13日目 デートをしないか、とディオンに誘われたキエルは、思わず「え?」と訊き返してしまった。
「デート?」
「そう。そなたがよければ、の話だが。今夜……いや、明日の夜だな。少し時間をくれないか?」
曇り空を見上げ、ディオンが言う。
「え、えええ? 私? お兄さん、何か悪いものでも食べたの?」
自分でも何を言っているか分からないな、と思いながらもキエルはディオンに訊ねた。すると、彼は微笑んで、人差し指を自らの唇に当てた。少し声が大きい、ということらしい。
「キエルは面白いことを言うな。私の体に悪いところなど何もない。ただ、そなたと少し時間を共にしたいだけだ」
「は、はい……。私はいいけど、テランスさんは?」
「テランスには内緒だ」
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