小双璧 藍願は困惑していた。
藍忘機に兎の群れの中に置き去りにされてしまったのだ。別に藍忘機が悪いわけではない。餌やりに連れて来てもらって早々に、藍忘機が門弟に呼ばれたのだ。
白くてふわふわした生き物達は別に怖くないが、足の踏み場もないほどに集まっているので、少し動けば蹴ってしまいそうで動けなくなっていた。藍忘機は毎度これほどに囲まれて、どうやって抜け出しているのだろう。
「哥哥……」
「おーい、そこで何やってるんだ?」
藍忘機が戻ってきてくれないかと座り込んでいるところに背後から声をかけられて、藍願はびくりと身を竦めた。
怖々と振り返ると、藍願と同じ歳くらいの少年がうさぎの群れの外側に立っていた。
「いつもよりうさぎが密集してると思ったら、お前を囲んでたんだな。何してるんだ?」
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