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    あさひ

    @odendendendon

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    あさひ

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    リジェフォル帰還後のフォカフォル話。教官がめっちゃ泣く。八章前から付き合っている設定です。この後めちゃくちゃセックスすると思う。

    #フォカフォル
    focafol

    「話がある」

    そう言って自分に背を向けて歩き出したフォカロルに、フォルネウスはぱちりと目を瞬かせた。

    様々な厄介ごとを解決、もしくは一部そのままにアジトへ帰還したフォルネウスに対するメギド達の態度は様々だった。彼の帰還を何よりも喜んだのはもちろんソロモンで、フォルネウスを迎えた日は特別だと言って二人きりでソロモンの部屋で話し込んで夜を明かした。その後も事あるごとにソロモンはフォルネウスを呼びつけ、話をしたがった。フォルネウスにとってもソロモンと過ごす時間は価値のあるものだったから、呼ばれればいつだってソロモンの元を訪れた。ソロモンの良き話し相手になるフォルネウス、ひいては親友と呼ばれる二人の関係性を、多くのメギドたちは微笑ましく見守った。もちろんフォルネウスを警戒し、監視の目を怠らないメギドもいる。それも当然のことだとフォルネウスは思っていた。
    その中でフォカロルは、どちらにも偏りすぎない中立的な立場を取っているように見えた。

    戻ってきたときは説教の一つでもあると思っていたが、帰還したフォルネウスを視界に捉えてもフォカロルは何も言わなかった。ただぐっと唇を引き結び、何かを堪えるような表情をして見せたがそれだけだった。その後は淡々と、今後フォルネウスに監視をつけることや、フォルネウスがこれからアジト内で担当する仕事などについて業務的に説明した。私的な会話はなく、ただ要件を伝えるのみだ。彼の態度はフォルネウスがアジトでの生活に馴染むほどの時間が経っても変わらなかった。

    だから、彼との関係はとっくに終わったと思っていたのだ。

    「入るよ」

    コンコン、とノックをしてからフォルネウスはフォカロルの部屋の扉を開けた。途端に馴染みのある彼の部屋の匂いが鼻腔に満ちる。懐かしい、と思う程度には頻繁に彼の部屋を訪れていた。機械油の匂い、積まれた紙とインクの匂い、彼自身の匂い。
    フォカロルはベッドに腰掛けてじっと床を見つめていた。濃い青色の瞳が今はいっそう深い色をして沈んでいる。いつもと様子が明らかに違う。フォカロルはフォルネウスを見ないまま右手で彼の隣に空いたスペースをとんとんと叩いた。もう恋人ではないのに一つのベッドに隣合って座るだろうか。距離が近すぎる気がする。けれども上手い言い訳が思いつかず、と言うよりも尋常ではない雰囲気を纏ったフォカロルに気圧されて、フォルネウスは黙って彼の隣に腰を下ろした。ぎしり。ベッドが大げさに軋んだ。

    「話って?」

    いつまで経ってもフォカロルが動かないので、フォルネウスから声をかけた。彼の肩が僅かに跳ね、膝の上に置かれた拳がいっそう強く握られる。ぎ、とグローブが擦れて鈍い音を立てた。フォカロルはゆっくりと、ぎしぎしと音がしそうな動きで体をこちらに向けた。まるで油の切れた機械みたいだ。瞳だけが小刻みに左右に揺れている。いつもは滑らかな口も、何か言葉を発しようとしては引き結ばれてわななくばかりだ。
    フォカロルが何を考えているのか分からず、フォルネウスはじっと彼を観察する。しばらくそうしていたフォカロルだったが、意を決したように、それでもまだ大分ぎこちない動きで右手をフォルネウスの左手に重ねた。いつもならば手袋越しでもわかる程だった彼の体温が、今は感じられない。ひやりと冷たさすら感じる。
    フォルネウスは重ねられた手を見て首を傾げた。この行動に含まれる意図はなんだろうか。

    「もしかしてキミは、ボクとよりを戻したいのかい?」
    「は!?」

    思わずといった風に上がった大きなフォカロルの声に、フォルネウスはぽかんとして、何か間違ったかなと目を瞬いた。フォカロルの表情は驚愕に満ちている。目をかっと見開いて、眉間の皺が深い。よくないことを言ったかな、とフォルネウスは弁解の言葉を紡いだ。

    「そういう意図じゃないのだったら、」
    「違う!いや、そもそも別れていないだろう!」
    「え、そうなのかい?」
    「おまっ…!!」

    だってボクが帰ってきた後、キミは一度もそう言う態度を見せなかったから。とっくに関係は終わったものだと思っていた。

    フォルネウスがそう告げると、フォカロルは腹を殴られたかのように息を詰まらせ、全身をわなわなと震わせた。眉間のしわがこれ以上ない程に深く刻まれる。重なっていた手をぎゅうと強く握られ、痛みにフォルネウスは眉をしかめた。だってそう取られてもおかしくない態度だったじゃないか、追い討ちをかけるフォルネウスの言葉にフォカロルはますます身を強張らせた。己を宥めるように浅い呼吸を繰り返し、何度も唇を震わせ、

    「そ、」

    唇から音を発したと同時に、両の瞳からぼたぼたを涙をこぼした。

    これにはフォルネウスも驚いた。出会った時から今まで、恋人関係になった後でさえ、フォカロルの涙など見たことはなかった。全身が人形のように固まったままのフォカロルの瞳から、涙だけが次から次へと溢れてはぼたぼたと頬を伝って落ちていく。声を上げずに泣くんだなと思った。こぼれた涙が重なった手の上にも落ち、フォカロルの右手を転がってフォルネウスの左手を濡らした。熱い涙だった。
    常でないフォカロルの姿を見て、フォルネウスもらしくなく動転した。元恋人が、いや、フォカロルの認識では現恋人が、身も世もなく大粒の涙をこぼして泣いている。かけるべき適切な言葉があるはずなのにちっとも思いつかない。フォルネウスは慌てて自分の中にある無数の言葉を手あたり次第に拾い集める。

    「ボクのこと、もう嫌いになったんだと思った」

    拾って投げた言葉は、口にしてみるとずいぶん陳腐だった。なんだか拗ねたような声色になってしまったのもよくない。嫌だなあボクは天才なのにと思っても、それ以上の言葉が見つからない。
    フォルネウスの拙い言葉にもフォカロルは真剣だった。目を見開き、首を僅かに横に振った。あいかわらず油の切れた機械みたいにぎこちない。首を振った拍子に涙が散ってフォルネウスの白い服を汚した。

    「ボクのことがまだ好き?」

    今度は首が縦に動いた。先ほどよりも力強い動きだった。

    「ボクには許されない罪があるのに?それを断じるべきだと、キミも判断したのに?」

    フォカロルの動きがぴたりと止まる。少しいじわるな質問だったかなと思う。
    フォルネウスの処刑は現状では保留になっている。フェニックスでさえそう判断した。彼らがフォルネウスを処刑すべきと判断したのは、もう随分前の話だ。あれからそれぞれの状況や立場は大きく変わっている。フォカロルの中でも変わっていくものがあっただろう。時は進み、全ては留まることなく絶えず変化せざるを得ない。
    それに、今フォカロルは軍団内の大罪人としてのフォルネウスではなく、恋人としてのフォルネウスとして接したいはずだ。それくらいはフォルネウスにもわかる。ならば恋人として適切な言葉をかけるべきだろう。恋人として。恋人…

    「セックスする?」
    「しない」

    これはどうやら違ったらしい。それでもフォカロルから久々に意味のある言葉が発せられて、フォルネウスは少し笑った。笑うと肩の力が抜けて、初めて自分がずっと緊張していたことに気がつく。笑い声を聞いてフォカロルも少し気が抜けたのか、握りしめられていた手の力が弱まる。フォカロルは深くため息をついて、乱暴にグローブをつけたままの手で目元を拭う。目の下の薄い皮膚が擦られて赤く腫れていた。鼻水も出ている。その顔がなんだか子供みたいに見えて、思わずフォルネウスはフォカロルの頭に手を伸ばした。皮膚は熱く汗ばんでいる。跳ねた髪を撫でつけるようにそっと手を動かす。フォカロルは黙ってされるがままになっていたが、ふいに額をこつりとフォルネウスの肩に預けた。一度決壊した涙腺はどうやら簡単には戻らないらしく、再び溢れた熱い涙がじわじわとフォルネウスの肩を濡らす。

    少し和らいだ空気の中で、二人はしばらくそのまま黙っていた。夕暮れが近い太陽の光が窓から差し込んで、部屋の中をゆっくりと温めていく。光に照らされた埃がきらきらと白く輝いて、まるで晴れた日の浅い海の中のようだ。思考がぼんやりと光に溶かされていく。時折フォカロルの鼻を啜る音が聞こえる。

    「お前は」
    「うん?」

    フォカロルの声が掠れている。ほとんど空気に紛れるくらいの小さな音だった。普段ならば聞くことのない、おそらく恋人であるフォルネウスだけが知っている声だ。

    「お前は、全てが終わった後、ソロモンが死ねばそのまま死ぬつもりだろう」
    「そのつもりだけど」

    そのつもりではあったが、なぜ彼が知っているのだろう。役目を果たしたら死んでもいいと言ったことはあるが、直接的な言葉を、フォルネウスはソロモンにさえ言ったことはなかった。ヴィータの感性に影響を受けた者ならば、何か気がつくことがあったのだろうか。フォルネウスにはわからない。

    「やめたほうがいいかい?」
    「…お前の意思を尊重したい。ただ…」

    フォカロルはそこで言葉を詰まらせた。意を決したように、フォルネウスの方から頭を離し、真っ直ぐにフォルネウスを見つめた。泣き腫らした目はまだ潤んでいて、夏の海の色をしていた。

    「お前が死ぬときは、俺にも教えてくれ」

    今度こそ、お前が死ぬ瞬間にお前のことを考えていたい。

    フォカロルの瞳にまた涙がたまる。まつげに引っかかって涙は溢れることなく、ゆらゆらと彼の瞳を海底のように揺らした。
    フォルネウスはぽかんとしてフォカロルの顔を見つめた。

    一体それになんの意味があるというのだろう。

    帰る場所のないフォルネウスの魂は、死ねばそのまま消滅する。情報を持ち帰ることのできない、評価されることのない魂が、いつどこで消えたところで大した違いはない。消滅する瞬間にその魂を想うことになんの意味があるだろう。なんの価値があるだろう。
    フォルネウスにはわからない。きっと永遠に理解できないままだろう。
    わからないけれど、恋人であるならば彼の意見を尊重するべきだろう。彼がフォルネウスに対してそういう態度を取ったように。

    「できるだけ努力するよ」
    「約束しろ」
    「先のことはわからないな…」

    フォカロルはむっと顔を顰めた。その拍子に涙がまた転がり落ちる。両の手で彼の頬に触れ、涙を拭った。顔じゅう涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。面白くなって両手で彼の頬を挟んだまま、音を立てて彼の顔に何度も口づけを落とす。しおからい。フォカロルは拒絶することなく、むしろ大分滑らかになった動きでフォルネウスの腰を抱き寄せる。グローブ越しの手のひらが熱を孕んでいる。

    「フォカロルかわいいね」
    「好きだ」

    興に乗じてふにふにとフォカロルの頬を挟んで遊んでいた指が思わず止まった。フォカロルは拗ねた子供のような、それでいて子供を宥める大人のような顔をしている。初めて見る顔だ。言葉と表情の意味を図りかねてフォルネウスは首を傾げた。

    「好きだ」

    手のひらが熱い。彼の手で触られると、その熱で自分のヴィータ体の輪郭がよりはっきりと感じられて嫌だった。その熱がだんだん溶け合い、混じり合って全てが曖昧になっていくのも嫌だ。でも触れた熱を通して伝わってくる彼の揺れる感情を感じるのは、そこまで不快ではない。多分、おそらく。
    フォルネウスは思わず手元にあった言葉を拾ってフォカロルにぶつけた。

    「セックスする?」
    「する」

    どうやら今度は正しかったらしい。何が正しさなのかはわからないが、二人の間で滞りがなければそれでいいということなのだろう。まだ明るい部屋の中で、布の擦れる音が響く。濡れたグローブが手のひらに張り付いて脱ぎにくそうだ。フォルネウスの白い手袋も濡れていた。遮るものがなくなった手のひらで、とうとうフォカロルはフォルネウスの体を抱いた。

    フォカロルの涙腺は壊れたままで、フォルネウスの肌に触れるたびにぼたぼたと涙をこぼした。それがなんだかおかしくて、フォルネウスは触れられるたびに子供のように声をあげて笑った。
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    あさひ

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    そう言って自分に背を向けて歩き出したフォカロルに、フォルネウスはぱちりと目を瞬かせた。

    様々な厄介ごとを解決、もしくは一部そのままにアジトへ帰還したフォルネウスに対するメギド達の態度は様々だった。彼の帰還を何よりも喜んだのはもちろんソロモンで、フォルネウスを迎えた日は特別だと言って二人きりでソロモンの部屋で話し込んで夜を明かした。その後も事あるごとにソロモンはフォルネウスを呼びつけ、話をしたがった。フォルネウスにとってもソロモンと過ごす時間は価値のあるものだったから、呼ばれればいつだってソロモンの元を訪れた。ソロモンの良き話し相手になるフォルネウス、ひいては親友と呼ばれる二人の関係性を、多くのメギドたちは微笑ましく見守った。もちろんフォルネウスを警戒し、監視の目を怠らないメギドもいる。それも当然のことだとフォルネウスは思っていた。
    その中でフォカロルは、どちらにも偏りすぎない中立的な立場を取っているように見えた。

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