酒に酔う 魈は酒を好んで飲まない。勧めても精々一杯飲めば良い方だ。いつでも戦闘に行けるようにしているのもあると思うが、一杯程度ではさほど様子が変わったようには見受けられないので、全くの下戸ではなさそうだ。
今日は夜風もあまりなく、景色を堪能しながら酒を飲むには絶好の日であった。ならば、隣で酒を嗜んでくれる想い人がいれば、尚更良い一日の終わりとなる。
そんな訳で望舒旅館を訪れ、広めの良い部屋を取った。窓から見える景色は申し分ない。あとは、彼が帰ってくるのを待つだけだ。
夜もだいぶ更けた頃、僅かに風が動く感触がした。そのような事をせずとも気配でわかるものだが、少しばかり彼の帰宅を嬉しく思ってしまう。
勝手に待っている間にだいぶ一人酒は進んでしまっていた。盃を置いて部屋を出る。階段を上がり、魈の部屋へと足を進めた。早く会いたい。と思ってしまうのは、些か酒に酔っているのかもしれない。夜風が気持ちよく身体をすり抜けていく。熱を冷ますには丁度良い風だ。
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