ふーふーちゃんには月に一度、
どこかへ出掛ける『特別な夜』がある。
定期的に訪れるその夜は彼曰く、義肢のメンテナンスを依頼しているらしい。欠かさずに行くドッゴの夜の散歩を俺に任せて、いつも日が昇る頃にようやく帰ってくる。家の周りはあまり人の気配も多くない穏やかで治安の良い地域なのに、彼は絶対に俺が夜に独りで出歩くことは許してくれない。だから散歩を頼まれる『特別な夜』は、俺とドッゴの束の間のデートとして楽しんでいる。
彼が帰ってくるのは夜更かし癖のある俺がまだ作業をしてる時間帯だから、シャワーを浴びた彼を捕まえて世話を焼くのが常だった。自身の世話を億劫がる彼にドライヤーかボディクリームのどちらを自分でやるかを選ばせるのは楽しみのひとつだった。俺に触れる許可を与える意味を正しく理解している彼とのちょっとした遊びでもある。
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