脳死のあめ水溜まりを踏んで駆けていく…そんな子供を見つめる夕暮れ時。
雨がやんで花々が閉じた視界には、オレンジと水色の絵の具を塗りたくったような空が見えていた。
先程まで雨の為近くの店に入り雨粒を凌いでいた高校生も、丁度今自動ドアを通って帰路につく。
そういえば私も帰らねば、さぞかし怒られるような気がする。
でもいいだろう、今日だけの楽しみだ。私を阻む壁はない。
ふと足元を見ると、ミミズを踏んでしまっていた。
人間のエゴによって命を踏みにじられた小さな命。
少し物悲しくなると同時に、自分も「そう」なりたいと湧く渇望。
雨で潤ったはずなのに、湧く意欲は渇くばかり。
同じように潰されたなら、私の血は塗りたくられた雨上がりのキャンバスを映し出すだろう。
猟奇的であろう思考を隅に、気付けば傘を手放していた。
親が勝手に選んだ、透明なビニールの傘。
風でよく逆さまになりやすい、全部を透かして見ることができる傘。
何故私は死にたくなったのか、疑問で仕方ない。
そうしろと雨雲にでも告げられたのか。
気分が悪い。
低気圧で頭でも体でもやられたか。
…とっとと帰ろう、怒られる気はするが。
水溜まりを避けて歩いていく。前も見ずうつむいて、アスファルトを見て帰り道を歩く。
雨一つで無駄に考えようとした私が負けだった。
この程度、広い広い宇宙銀河星星星の中ではちっぽけな話だ。