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    theblackbox58

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    theblackbox58

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    準備期間中のダンエイ、考えるほどに意味わからないし味があるなっていうはなし。弱ってるエイムスくんがみたかった。
    ダンエイがすきなんです。それだけなんです。

    【ダンエイ】夢【全年齢】 最後に見たのは、じゃあな、と大きな口で大声を出す大柄な男の両手を掲げた巨躯。それから、一年近く。ようやく得たエージェンシーへの切符となる身分と履歴書を手に、エイムスは平穏な一般人としての日々を繰り返している。面白みもない単調な毎日を、だ。
     おそらく、そのせいだろう。自己分析しながら踏みしめた床は、やけに柔らかく弾力があって、今の己が真っすぐ立っているのかすら甚だ自信がない。周囲は、ひどくぼやけているが、かろうじてどこかの海岸であることはわかった。海の青と茶色い砂。作り物じみた波の音が、引いては押してを繰り返す。登場人物は、エイムスともうひとり。向かい合う影が、にかりと口を開いた。
    『好きな女ができた』
     馬鹿らしい夢だ。
    『かわいい娘も生まれたんだ』
     男の両脇に顔のない、それでいて幸せそうに微笑んでいるとわかる女と子どもが、ぬうと地面から生えダンテにしがみつく。
    『だから、復讐はもうやめた』
     勢いよく起き上がって、枕元に隠した銃を握る。眼の前に立っていた三人はいない。よくある単身者マンションの何もない部屋の壁が、ただ白くエイムスの目を焼く。
    「夢だ」
     口にして、セフティーをかけ直す。
    「クソッタレ」

     次は、それから三ヶ月後だった。
    『新しい人生をはじめるべきだろ?』
     原色の入り交じる街中のオープンカフェ。向かい合って座る男は、髪を短く切りそろえ、シンプルなダークグレーのスーツを着ていた。
    『そろそろ潮時じゃないか』
     目にしたことのある世界中の街並がミックスされた背景が気持ち悪い。あらゆる言語が飛び交うくせに何ひとつ聞き取れない雑音が気持ち悪い。テーブルに乗った、三原色がぐるぐると渦を巻くカプチーノが気持ち悪い。なによりも、牙を抜いた顔で笑う男が気持ち悪い。
    『お前だってそう思うだろ?』

     次の夢で、男は女を守って英雄的行動の末に死んだ。
     次の夢で、男は拾った子どもにすべてを投げ出すことにした。
     次の夢で、男は青空の下、農園を経営していた。
     次の夢で、男は新たな家族と笑っていた。

     そして、今日の夢。男はついにすべてを忘れることを選んだらしい。向かい合うエイムスに首を傾げ、彼は無防備な顔をする。じゃらじゃらと首から下げたネックレスの束、山のような指輪と腕輪にお気に入りのスーツ、全部を投げ捨て、どこにでもいる誰かのような顔をしてこちらを指差した。
    『おまえ、だれ?』
     ベッドから起き上がる。枕元に投げ出した銃を手に、よれたシーツで濡れた額を乱雑に拭うと、殺風景な部屋を大股に横切った。ラップトップはキッチンのカウンターに置いたままだ。
    「ころす」
     キーボードを叩き、一昨日変えたパスワードを入力すれば、従順な機械はエイムスの指に従って男の場所を洗い出す。最後の連絡は三ヶ月前、中継地を挟んだ一文のメールだった。モバイルの痕跡をたどる。駄目だ。この電話は破棄されている。ならば、資産の動きを見ろ。あの男が、いつまでも寂れたモーテルや路地裏の宿で満足するわけがない。どこかでカードを使っているはずだ。
    「みつけた」
     四ヶ月前のダブリンのあと、先月、マラケシュに滞在している。ここから、男の足取りを追いかけられる。邪魔な銃を腰に捩じ込み、暗闇の中で目を焼く画面にかじりつく。その時だ。夢中でキーボードを叩く耳を、唐突な電子音が貫いた。ラップトップの左隣、置いたままになっていたモバイルが着信を告げている。ゆっくりと叫びながら震える機械を手にとって、液晶に映る番号を見た。見覚えはない。けれど、予感がした。通話の表示をタップして、耳に当てる。
    『エーーイムス』
     陽気な声だ。
    『よお!元気か?元気だよな?どっちでもいいか!』
     ゆっくりと後退って、ぶつかったテーブルに手をついた。
    「ダンテ」
    『そうよ、お前の愛しのダーリンだ』
     がしがしと空いた手で頭を掻きむしる。夢とひと続きになっていた地面が、現実としての堅さを取り戻し、冷えた汗に、ぶるりと身震いした。
    「何の、用だ」
    『俺は優しいから、ちゃんと仕事をしてるパートナーにご褒美をやろうと思ってな。優しい男だから!』
    「いらない」
    『つれないこと言うなよ!』
     ピロン、と音がして、ラップトップに数字の羅列が浮かび上がった。
    『ちょうど半年後、そこで落ち合おうぜ』
    「馬鹿なことをいうな。必要性が、」
    『じゃあな』
     言い切る前に、電話は切れていた。残るのは、しんと静まる夜明け前の部屋に取り残されたエイムスとラップトップの数字。冷えた手で銃を抜き、セイフティを掛けてテーブルに置いた。ゆっくりとシンクに向かい、蛇口をひねる。ザアザアと溢れ出る水の下に、乱暴に頭を突っ込んだ。冷たい水に思考がクリアになっていく。
    「クソッタレ」
     ぐるり、唸ると水を止めて、頭を振る。半年だ。それまでに、彼と会った痕跡が欠片も残らないよう、下準備と対策を進めなくてならない。もちろん、直接会うに値するようなエージェンシーでの手土産と成果も必要だ。
    「クソ!」
     上を向こうとする頬を両手で張って、エイムスは大股にバスルームへと足を進めた。寝ている暇などない。馬鹿らしい夢を見ている時間もない。シャワーを浴びたら、行動開始だ。全て見透かす男への借りは、半年後にたっぷりとお返ししよう。
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    beni_0082

    DONE紅のカラプラのお話は
    「きっと仕方の無いことなのだ」で始まり「本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った」で終わります。
    #shindanmaker #こんなお話いかがですか
    https://shindanmaker.com/804548
    (締めの文変えてます申し訳。発想だけ貰ったような形)
    (第1部読んだ人向け)
    (婚約者確定している)
    (文がド下手)
     きっと仕方の無いことなのだ。私は王族で彼は騎士。そもそも結ばれることすら難しかったはずの恋だもの。だから今こうして彼と密接な関係を持つことができているだけでもありがたいことだと。これ以上を望むのは浅ましいことだと。ざわつく心に何度も何度も言い聞かせる。
     でも。それにしたって。

    (そろそろハグくらいはしてみたい……!!)

     は、はしたないかしら!?こんなことを思ってしまう王女なんて。でもカラムと正式な婚約者になってもう一ヶ月になるのに!一緒にお茶をしたり散歩をしたりすることのみに留まっているのは流石に、流石にペースが遅いのでは!?
     もちろん、王族としてちゃんと弁えてはいるつもりだ。本当の夫婦になるまでは身体を、身体を!か、かっ……さねるところまでいくのは!よろしくないことだってわかっている。……でもハグくらいまでなら、もう進んでしまっても大丈夫なのではなかろうか……?うぅ、なんとなく落ち込んできた。カラムのことは信じているのに。私に魅力がないとか、そういうネガティブな理由で手を出してくれないわけではないことだって、わかっているのに。
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